カナダ大使館での出来事については当サイトでも報告してきた。2024年3月4日、各メディアは「カナダ大使館職員に雇用保険 職業安定所の職権で」と報じた。
厚生労働省には「労働保険適用事業場検索」というサイトがある。2024年4月1日から、カナダ大使館が「雇用保険・労災保険適用事業場」として加わった。
カナダ大使館に法律の適用が及んだのだ。
始まり
2022年にゼネラルユニオンにカナダ大使館に勤務する妊娠中の女性から相談があった。「私は雇用保険に加入しておらずこのままでは育児休業手当も受け取れないことになる。おかしくはないだろうか」というものだった。
組合は直ちにこの相談者の契約書などを検討し、彼女が雇用保険加入資格者であることを確認した。彼女は直ちに組合に加入し、組合は雇用主であるカナダ大使館に対して彼女を雇用保険に加入させることを求めた。問題はすぐに解決されると思われた。
しかし….
事実はそうではなかった。カナダ大使館は無反応だった。組合は団体交渉を要求した。これに対してカナダ大使館は「日本の法律は尊重するが、自分たちには『主権免除』があるので万事自分たちで決める」という態度を示した。
組合はこの団体交渉の拒否について、不当労働行為として大阪府労働委員会に救済申し立てを行なった、この申し立てに対して大阪府労働委員会は、当事者を含めた審議を一度も行なうことなく却下した。「門前払い」だった。
それでも前へ
われわれは諦めなかった。組合の援助のもと当該組合員はハローワークに赴いて雇用保険資格確認請求を行なった。
その後は既報の通り、当該組合員は雇用保険に遡及加入し、育児休業給付金も受け取り、上述の通りカナダ大使館全体が2024年4月1日から「労働保険適用事業場」になった。
確認しておくべきこと
この具体的経験から以下のことが確認できる。
紙に書かれて保障されている権利でも、それを実際に握るためには、時には大きな努力が必要である。
労働組合への加入は、労働者が協力して活動するための確かな礎である。
必要な時に「行動する」ことは大切である。今回の件では、当該組合員がハローワークに赴いて雇用保険資格確認請求を行なったことが決定的に重要だった。