X社に雇用されY学校に派遣されている組合員がいる。このA組合員は働き者で、派遣先の学校でも日々の教育に不可欠と言っていい存在である。
だが、その働きぶりからすれば実際の待遇はとても十分ではなく、賃上げや休暇の提供を本人が繰り返し求めても、X社からは冷淡な対応が続くだけだった。
組合加盟通知の後
この春、この組合員の組合加盟通知と賃上げなどの要求がX社に送られた。
X社の対応は素早かった。要求額には届かないものの、即座に有額回答が示された。その他の要求にも「NO」の回答はなく、実際にX社は、組合とも連絡を取り合いながら派遣先のY学校とも協議を続けている。これは、組合加盟通知以前からの大きな変化である。
労働組合法の保護をもたらす組合加盟通知
この変化はなぜ起きたのだろうか。
まずこの組合員は、会社に「私は組合員です」と告げることで労働組合法の保護を得た。
組合加盟通知には「今後、組合員の雇用と労働条件に関する事項は労働組合との協議事項となること」、そして「組合員であることや労働組合の正当な活動を理由に不利益扱いすることは労働組合法違反であること」が明記されている。
さらに前提として、この組合員は働き者で職場の信頼が厚く、職場になくてはならない存在だったことがある。これは何も特別なことではない。労働者は基本的に働き者であり、それぞれが職場で大事な役割を担っているからだ。
X社でのこの最近の経験は、労働者が組合に加盟し、会社に「私は組合員だ」と告げ、要求を公然と掲げてその実現を会社に求めることが、労働条件向上のための有効な道であることをいま一度示している。