『不満を言うだけではなくて、変えるために行動したら?』
この一言が私とユニオンとの出会いです。当時私は全国に教室がある子ども英会話教室で講師として働いていました。得意な英語を活かした仕事ができること、生徒の成長を間近に感じ、様々な国出身の外国人と一緒に働くことで学ぶことも多く、仕事自体はとてもやり甲斐がありました。
けれども、日本人講師の待遇はひどいものでした。最低賃金ラインの給与で残業しても休日出勤しても手当は付かず、有給なし、社会保険は問い合わせるまで手続きしてもらえない。。。
当時無知だった私は「大企業じゃないところは制度が整って無いんだな…」ぐらいに思っていました。
この給料と待遇では自立して生活するにはかなり厳しく、長く働ける場所ではありません。実際、講師の入れ替わりは激しく、数年働いて経験を積んだら、もっといいところに転職しよう、と考えていました。
また、日本人講師と外国人講師の待遇の差も納得できないものでした。
レッスンのみでなく教室運営、保護者対応、イベント企画運営、生徒募集、すべて日本人講師が主体となって進めている仕事です。なのに給料は当時フルタイム勤務でしたが、ほぼレッスンのみの外国人講師の半分ほどだったのです。最低賃金の上昇に伴い、日本人講師の給与も近年上がってはきていますが、それでも大手英会話スクール外国人講師の平均的な月給から比べると、日本人講師やスタッフの給与は7〜8万ほど低いところがほとんどです。
教育産業の多くは”先生”として働く人たちのやり甲斐と生徒たちへの愛情に寄りかかって成り立っています。そこをどうにかしないと英会話教室で働く限り同じことの繰り返しになるのです。
辞めるのは簡単だけど、教えることは楽しいし、今教えている生徒たちの成長をもっと見たい、先生の仕事を続けたい、でもこのままの状況で働き続けるのは厳しい、、、
葛藤していた私に外国人の同僚から冒頭の言葉をかけられたのです。
ユニオン、労働組合は
労働条件の改善や維持を目的として、「労働組合法」や「労働三権」に基づき、労働者が主体となって結成する団体です。雇用主よりも立場の弱い労働者が団結することで、雇う側と対等な立場で交渉することができます。
ユニオンでの主な取り組みをご紹介します。
文書で改善要求を提出する。
違法なことをしていると気づいていない雇用者もいます。文書であなたの会社のここがおかしいですよ、と通知することで改善される場合もあります。
団体交渉
文書では改善されない場合や直接話し合いの場を設けた方が良い場合は、団体交渉を行います。私が働いていたスクールでは定期的に団体交渉を行っていました。ユニオンには労働基準法などに精通した、経験豊富なメンバーがいます。私もたくさんアドバイスをもらい、助けてもらいました。
あっせん
労働者と事業主間の団体交渉だけで改善されない問題は県の労働委員会に申請してあっせん委員を交えて解決へ向けて話し合いを行います。
さらに、解決できない問題によってはストライキ、調停、裁判などが行われます。
ここからはユニオンで実際に私がやってきたことを紹介します。十数年前から今とでは環境も変わってきてはいますが、程度の差はあれ、似たような問題で困っている方の参考になれば幸いです。
就業規則の開示
祖母が亡くなったとき、有給休暇や慶弔休暇はないと言われました。私の直属の上司も会社の言うことをそのまま信じて私に伝えていたのです。のちにユニオンで就業規則の開示を要求し、有給休暇は当然のことですが、慶弔休暇、生理休暇もあることが判明しました。就業規則は職場のルールブックです。労働者の権利も記載してあるもので、法に則って管理されているか必ず確認しましょう。
教室運営費について
教室に電話がないため個人の携帯を使って問い合わせ対応や保護者とのやりとりをしていました。受け持ちの生徒一人当たり20円/月が電話代、教室運営費として支給されていました。教室備品(画用紙や文房具)レッスンで使う絵本やゲーム、教材コピー代なども教室運営費から支払うようになっていました。当然足りないので、ポケットマネーで買っていました。
団体交渉で立替払金として請求をしたところ、立替払金に関しては領収書の不備等を理由に支払われませんでしたが、プライバシー保護、コンプライアンス重視の時代の後押しもあり、各教室に携帯電話が支給され、また、教室運営費の金額は据え置きでしたが、ハロウィンなどのイベント費が増額されました。
休日出勤、残業等の手当
夏になると一泊2日のサマーキャンプが毎年行われていました。食事も寝るのも子供たちと一緒(夜に寂しくて泣く子、興奮して寝ない子、夜中のおしっこ対応で取れるのは仮眠程度でほぼ寝れない。)沢登りやキャンプファイヤー、日中のアクティビティー、低学年の着替えや風呂など身の回りの世話。。。怪我がないよう、安全に帰って来れるように神経を擦り減らす業務でした。
キャンプのしおりから勤務時間を計算して、休日出勤、残業手当を請求。手当は請求通りに全額支払われ、その後の代講などで休日出勤した時に関しても割増賃金で請求して、支払われるようになりました。
雇用契約書について
入社当時の雇用契約書は期限の定めはなし。数年後、会社の方針が変わったと突然全ての日本人講師に1年の有期雇用契約書にサインするように指示がありました。1年後に契約を更新される保証は無いので、労働条件の不利益な変更にあたるとサインを拒否しました。そのまま勤務し続けましたが、特に困ったことは起こりませんでした。
1人では声を上げることは難しい場合もあると思います。まずは自分の権利を知ること、周りの人にも自分たちの権利を知ってもらうこと、そして少しでも多くの人にユニオンの力を借りるという手段があることを知ってほしいと思います。
学校で問題がありますか?労働者としての権利について質問がありますか?組合員であるかどうかを問わず、毎月Zoomで開催される英会話Q&Aフォーラムにご参加ください。続きを読む