労働者が年次有給休暇を取得する際に、就業規則等で事前申請を義務付けている会社は多い。中には「10日前までに」とか「1ヶ月前までに」として、申請がこれに遅れると休暇の取得を認めない会社もある。
そもそも、年次有給休暇の意味は何なのだろうか。厚生労働省は以下のように述べている。
「年次有給休暇とは、一定期間勤続した労働者に対して、心身の疲労を回復しゆとりある生活を保障するために付与される休暇のことで、『有給』で休むことができる、すなわち取得しても賃金が減額されない休暇のことです。」
そして、こうした考えに基づいて労働基準法第39条第5項は以下のように述べている。
「使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。」
だから、年次有給休暇は「労働者が取得したい時に自由に取得できる」ことが基本である。
では、労働者が年次有給休暇を取得する際の申請についてはどう考えればいいのだろうか。
この点については法律の定めはない。上述したように半月前までの事前申請を就業規則で義務付けている会社もあれば、急病などを考慮して、事後申請を認めている会社もある。
この問題を考える際に大事なことは、上述した年次有給休暇の意味、そして「労働者が取得したい時に自由に取得できる」ことが基本であることを使用者に確認させることである。もちろん労働者も会社の正常な運営を考慮する必要があるが、それは、使用者の年次有給休暇についての正しい理解が前提である。
「年次有給休暇取得の事前申請は何日前が適当?」という点については、そのてがかりとなる最高裁判所の判例がある。
1982年3月18日の「電電公社此花電報電話局事件」についての最高裁判所の判決は以下のように述べている。
「年休の請求を2日前までに行うこととしている就業規則は、時季を指定すべき時期について原則的な制限を定めたものとして合理性がある。」
これは目安になりうるだろう。
上述した「10日前までに申請」とか「1ヶ月前までに申請」を義務付けている就業規則は、年次有給休暇の意味や関係法令と照らせば、その合理性は疑わしい。
最も大事なことは、年次有給休暇は「労働者が取得したい時に自由に取得できる」点である。