要約
日本で働く人の大半の労働者には、産休・育休、出産一時金、育児休業給付金を取得する権利があります。しかし、多くの外国人労働者はその権利を知らず、企業側の圧力により不当な扱いを受けることがあります。本記事では、あるフィリピン人夫婦のケースを紹介し、労働組合の介入によって彼らが正当な権利を勝ち取った経緯を説明します。労働組合の支援がなければ、多くの労働者が泣き寝入りする状況に置かれる可能性があります。日本の労働法がすべての労働者に適用されることを広く周知し、組合の力を活用することの重要性を伝えます。
日本で働く人の大半は、産前・産後休暇(産休)も、男女ともに育児休業(育休)が取得できます。そして、もちろん、出産一時金も育児休業給付金も受給することができます。
実は日本人の中でも、これらの権利についてよく知らない人が多くいます。日本語で情報を得られる環境にいても、この状況です。そのため、日本で働いている外国人にとってはさらに決してそうではありません。技能実習生に対する「妊娠したら帰国」という不当な扱いが後を絶たないと言われていますが、技能実習生だけではなく、ある大手企業内でもそうした実態が浮かび上がりました。
世界各地に30以上の現地法人を展開する某グローバル企業で働くフィリピン人夫婦のことです。二人はフィリピン現地法人で働き始めました。機会を得て、2022年5月に「社内出向」の制度を使って来日し、当初は横浜と福岡に離れて働き始めました。
その後、やっと福岡で一緒に暮らせるようになり赤ちゃんに恵まれました。そんな幸せな二人に、会社の担当マネージャーは、「妊娠おめでとう。妊娠したのなら奥さんは会社を辞めて二人一緒に日本で暮らすか、二人ともフィリピンに帰国するか、どちらかに決めてください。」と告げてきました。そして、年始早々には、「契約期間は2025年3月31日までだから、できるだけ早く帰国してフィリピンで出産した方がいい」と、優しさを装いながら早期帰国を迫ってきました。
二人は会社のそうした姿勢に納得できませんでした。二人はまず外国人の妊娠出産のトラブルの相談窓口「Mothers Tree Japan」に相談し、「アジアに生きる会・ふくおか」を経て、ゼネラルユニオンへ相談に来られました。これらの支援団体は貴重なアドバイスを提供してくれますが、労働組合は法律で認められた団体交渉権があり、使用者に対して要求を行う法的な権利があります。
二人は、社会保険制度を利用して日本で出産し育児をすること、そして日本で暮らしながらシステム開発のスキルを磨くことを希望されました。会社から報復されるという不安もありましたが、自分たちの希望を叶えるためにゼネラルユニオンに加盟しました。
私たちはまず労働局へ相談に行き、会社の対応は労働基準法にも男女機会均等法にも違反していることを指摘し、会社に対する指導を要請しました。
そして、神奈川にある本社宛に、二人が組合員であることを通知し、妊娠・出産に係わる労働基準法・男女機会均等法の遵守を要求しました。
その結果、「職場と管理部門のコミュニケーションに齟齬が生じ、取扱いについて会社の説明に不足がありました。」として、出産育児に関する休職や産前産後休暇制度を利用できること、手続きや制度の申請方法などについては本部担当から連絡させること、さらに安心して出産できるように契約期間も延長されました。
100%、二人の希望が叶いました。ただ忘れてはいけないのは、この制度は日本で働く人の大半が利用できる制度だということです。そして、しかし、使用者がこれらの権利の行使を妨げようとする場合、労働組合の介入が必要となることが少なくありません。これは日本の労働法全般についても言えることです。 日本の労働法は「属地主義」であり、「日本で働いていれば誰でも適用される」制度だということをもっと広く日本で働く外国籍の仲間に訴えていく必要があります。
組合員からのメッセージ:
妊娠中に日本で働く外国人として、会社の人事担当者やマネージャーと交渉することは非常に困難でした。何度も話し合いましたが、結果は私たちにとって圧倒的に不利なものでした。私たちはマザーズ・ツリー・ジャパンのイベントに何度か参加し、私たちの状況を伝えました。その結果、「アジアに生きる会・ふくおか」、そして最終的にはゼネラルユニオンを紹介され、話し合いを重ねました。彼らの支援を得て、私たちは労働局へ訴え出ました。それからは交渉がスムーズになり、私たちに有利に働きました。彼らのサポートがなければ、私たちは不当に母国に送り返されていたでしょう。
※ 妊娠・出産を理由とする解雇は、以下の法律に違反します:
1. 労働基準法
・第19条:「使用者は、産前産後の女性が労働基準法第65条の規定によって休業する期間及びその後30日間は、解雇してはならない」
2. 男女雇用機会均等法
・第9条第3項:「事業主は、その雇用する女性労働者が妊娠したこと、出産したことその他の妊娠又は出産に関する事由であって厚生労働省令で定めるものを理由として、当該女性労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない」
3. 育児・介護休業法
・第10条:「事業主は、労働者が育児休業申出をし、又は育児休業をしたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない」
4. これらの法律に違反した場合、以下の罰則が適用されます:
・労働基準法違反:6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金(第119条)
・男女雇用機会均等法違反:企業名公表などの行政措置(第30条)
