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A. 目前の課題
全ての労働者の健康を守り経済的安定を図ることが最優先課題である。
まず最初に、「労働安全衛生法」に基づき、雇用主には労働者の安全と健康を確保する責務があることを指摘しておかねばならない。
感染防止のためのマスクの着用について組合員の中には全く異なる意見が存在している。会社がマスクの着用を命じるのをどうやって拒めばいいかを知りたがっている者も、更には自分が教えている生徒のマスクを使う権利さえ否定したい者さえいる。一方、職場の全労働者にマスクを支給することを使用者に求め、使用者が用意した自家製のマスクを「効果があるかどうか疑わしい」として使用を拒む者もいる。
マスクの着用を厳格に義務付けるかどうかは、教室の広さ、学生数、教室内の人の密集度などを基にして書く職場の支部が判断すべきことである。 どこでマスクを使うかは、雇用に当たっての前提条件なのであり、組合員は指示に従わねばならず、また、マスクは当然使用者が準備しなければならない。
誰もが認める予防策は石鹸による手洗いや消毒液で手を清潔にすることである。これは感染予防に大きな効果がある。従って、全ての職場にはこうした用意が必要だし、机などをアルコールを含む清掃用品で拭くことも同様に必要である。
では、教師は机の拭き掃除をやるべきなのか。
この点でも組合員の中には相対立する要求が見られる。はっきりしていることは「誰かがその仕事をしなければならない」ということだ。では、みんなが働いている時に、教師のために誰かがリスクを負うことを要求するのか。
それは違うだろう。
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B. 労働者への直接の支援を求める
休講となった場合には、労働者に自宅待機を命じた使用者に対しては組合は給与の全額支払いあるいは最低6割の休業手当の支払いを求める。
少なくない使用者がこれに応したがらず、更にはこうした場合に平均賃金の6割以上の支払いを使用者に義務付けている労働基準法を意識的に破り始めている使用者さえいる事実を我々は懸念している。
そして、法に基づき支払いを使用者に強制すべき労働基準監督署がその役目を果たさず、使用者の法違反をなすがままに容認している現実もまた我々が懸念するところである。
ここに、暮らしを守るためには労働者自身による使用者との交渉=団体交渉と直接行動が求められる所以があるのだ。
-英会話(語学学校)業界
語学学校は非常勤講師を自宅待機させる対応を行なう動きがこれまでのところ主だが、労働基準法が定める「平均賃金の最低6割の休業手当」を支払うことなく自宅待機を命じっられたとの多数の相談のメールや電話が常勤講師から我々の元に寄せられている。
使用者に対して収入の全額補償を求めなければならない。使用者は仕事も収入も不安定である場合が多い非常勤講師について法をも無視した扱いを行なおうとする傾向にあるので、とりわけ非常勤講師はこれを強く求めよう。
現にGABAは3週間の休講を行ない講師への収入の全額補償を行なっている。決して無茶な要求ではないのだ。他の主だった語学学校もこうした対応を行なう財政力は十分に持ち合わせているはずだから。
オンライン・レッスンはどうか。GABAやベルリッツのようにマンツーマン形式の授業に力を入れている学校はその導入はより容易だろう。新型コロナウィルスの感染拡大が一層進むとしたら、語学学校はこのオンライン・レッスンの導入を検討しなければならない。
-民間企業や幼稚園へ講師として派遣されている労働者
この分野を我々は特に注視している。ここでは教師達の多くが非常勤であり仕事がなくなる事態が見られるからである。特にある大手会社の動きを我々は懸念している。
我々はここの経営側と議論を行なったが、この会社は顧客のキャンセルによって授業がなくなった教師達に対する収入補償の必要さについては認めない姿勢を取り続けている。
3月末までに同社はこの収入補償について決め我々に連絡が来ることになっている。
もしその答が「支払わない」だとしたら、我々は労働基準監督署、労働局、そして厚生労働省本庁にもこの会社の訴追を要求する行動を始めることになるだろう。
-派遣・直接任用ALT(外国語指導助手)
現時点では、休校を理由に賃金の支払が拒否されたという事例を我々は聞いていない。
ある学校がALT達に「休校になったら給料は払わない」と言っていたが、ゼネラルユニオンからの事実確認の連絡を受けた後態度を変えて支払うことになったとの報告は受けている。
こうした「寛大な」態度の理由の一つは、教育委員会が派遣会社に対して当初の契約を守って契約金額をちゃんと支払っているという事実である。
派遣ALTも直接任用ALTも、休校期間もやることが特になくても出勤しているようだ。このような場合組合は、職場でしかできない仕事がない場合には自宅での勤務を認めるように要求することができる。2020年2月28日付の文部科学省発通知(元文科初第1585号)もそうした勤務を推進することを述べているからである。
-大学及び私立学校(小・中・高)
これまでのところ、無給あるいは減給して自宅待機が命じられたケースを我々は聞いていない。公立学校の休校が影響して私立学校が休校となった場合でも、非常勤を含む私立学校の全ての教師には給与は支払われている。
新年度の開始を遅らせる大学については注意を払う必要があるが、教師の自宅待機を推進するような動きは見られない。但し、単位取得に関することについては注意を払わねばならない。もし政府がカリキュラム完遂に必要なコマ数(現在大学では1期15コマ)を減らした場合、年度開始の遅れに伴う期末時期の先送りや補講がどうなるのかという問題がある。教師が全ての補講を行なうことはできないだろうからである。だから、学校側には柔軟な対応を求め、例えば補講の代わりに学生に課題を与え教師はその採点を行なうようなことを要求することが必要となる。
繰り返すが、教師は学校に行って仕事をしなくても、上述の文部科学省の通知にある通り自宅勤務が認められるべきである。
-免疫力の弱い労働者
高齢の労働者や免疫力の弱い労働者については、感染の危険がある期間は安全最優先で対応することが認められねばならない。こうした組合員が出勤を避けなければならないことを理由として何らかの処罰を受けるような場合には、ゼネラルユニオンは動かざるを得ない。
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C. 使用者を通じてではなく直接労働者に経済支援を
日本をはじめ世界各国の政府は企業にお金を渡して「休業期間中、このお金を雇用と賃金の維持に使うように」と言っている。これは役に立つのか。
.安倍内閣は、休校期間中に保護者が子供の世話のために自宅にいなければならない場合に会社がその賃金の全額を支払えば、日8,330円を上限に政府が助成金を会社に支給する計画を既に発表している。
現在までゼネラルユニオンが接触した使用者はみんな、この政府の計画について尋ねると笑うだけだった。
ゼネラルユニオンが活動している業界では、この上限額は一日の賃金より低く、従って使用者はこうした労働者に賃金を全額補償すれば会社は損をする、というのである。
つまり、労働者への経済支援は「会社経由」ではなく直接労働者自身けられるべきなのだ。
● 新型コロナウィルス関連の医療費は労働者個々人の健康保険ではなく国自身によって負担されなければならない。
● 社会保険や私学共済、公務員共済に加入している労働者の場合、検疫を命じられたり医師から勤務を控えるように命じられたら賃金の6割は補償される (「傷病手当」を通じて)。しかしその他の労働者―使用者によって意図的に社会保険への加入を妨げられている場合も含む―には何の賃金補償もない。
● 現下の危機の中では、日本に住む勤労者は全てが等しく賃金補償を受けられるようにしなければならない。
本稿執筆時点で厚生労働省は既に通知を出し、新型コロナウィルスに感染した場合には国民健康保険でも上記の社会保険からの傷病手当と同様の手当を支給するように地方自治体に指示を行なった。
● 企業倒産や解雇の場合の賃金補償について。雇用保険に加入している労働者(週20時間以上勤務している被用者)には賃金補償があるが、多くのパートタイム労働者(非常勤)は、雇用主が加入を拒んでいる労働者も含めて何の賃金補償もない。
繰り返すが、現下の危機の中では日本に住む勤労者は全てが等しく賃金補償を受けられるようにしなければならない。
そして現在の制度の下では、失業給付金の支給期間は雇用保険への加入期間と年齢によって異なっているが、現下の危機の中では危機が去り労働者が新しい仕事を得るまで支給が続けられる必要がある。
● 雇用主に自宅待機を命じられその期間の賃金の支払いを拒まれた労働者は、慢性的に人手不足で本当に役立つことを期待できない労働基準監督署に賃金支払いへの希望を託するわけにはいかない。迅速にその賃金分を労働者に提供する基金を新しく設立し、支払いを拒んだ雇用主は罰を受け、支払いを拒んだ賃金分を徴収されなければならない。
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D. では、これら全体を実行するためのお金は誰が払えるのか
「そんなことはできない。賄えるお金がないから」との言い分を認めるわけにはいかない。東日本大震災の後、政府は被災地の清掃と復興を賄うために2.1%の復興特別所得税を創設した。全国民が被災地と被災者を援助するためとされた。助けが必要な人々に援助の手を差し伸べることはもっともなことであってこれに異を唱える人はほとんどいないはずだ。
もっといい方法がある
2019年9月のブルームバーグ・ニュースは「今や日本の企業は506兆4,000億円の現金の山の上に座っている」と報じた。これは「まさかの時のため」として貯えられているものなのだ。で、今はまさに「まさかの時」である。
この「現金の山」は、政府の長期にわたる法人税減税にも助けられてできたものである。そして今、苦境にある労働者を助ける上で何の役にも立っていない。これに課税するだけで、新型コロナウィルス感染拡大への対策費用はたちどころに捻出できる。企業はこの危機の中で応分の負担を引き受けねばならない。助成金は企業に向けるのではなく全ての労働者の賃金を全額補償し続けることにこそ使われなければならない。
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E. もっと検査を オリンピックではなく
新型コロナウィルスの感染拡大が進む中、我々は感染の爆発的拡大が起こらないか注視してきたが、ほんの数日前まで日本政府は世界中から人々を呼び寄せ大人数を一か所に集め、ただでさえ混雑する東京の地下鉄や電車にこれらの人々を乗せることを考えていた。
多くの人々は感染予防のためにもそして状況の深刻さを知るが故に、花見のような簡単なイベントさえ取りやめた。安倍首相はそれでも、死者が身近な場所でも出ているにも関わらず、世界有数の人口密集都市である東京で危険なショーを行なうことを主張し続けた。
事実、オリンピックを開催したいという、ただそれだけのためにウィルス検査を意図的に行なわず感染者数を低く抑えたのではないかという疑念が広く沸き上がった。3月20日時点での日本と韓国とを比較すると、韓国では270,000人(185人当たり1人)が検査を受けているのに対して、人口がその約2倍の日本では僅か16,484人(7,600人当たり1人)である。
エンターテインメントや安倍を国際的スターにすることを考える前に、まず国民である。娯楽より暮らしの糧を要求しよう。
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F. ゼネラルユニオン
現在のところゼネラルユニオンは通常通りに活動し、組合員が直面している諸問題に対処し、また年度末から新年度へと移行するこの時期、各使用者との交渉も続けられている。会社の活動も通常通りのところももちろんあり、組合もまた解雇、パワーハラスメント、賃金未払いなどの解決に当たっている。
-スタッフの配置
組合のスタッフがその役割を確実に果たし続けることができるように、感染を避けるべくスタッフには可能な限り在宅で勤務するように要請している。従って組合事務所に電話されて応答がない場合には、メッセージを残しておくよりも以下のアドレスにメールを送って頂く方が迅速な対応が可能である。
-年次総会
述べたように組合の活動は全面的に継続中であり、併せてゼネラルユニオンは4~5月の支部年次総会の準備と5月24日のゼネラルユニオン年次総会も準備中である。
-組合費と組合加盟
仕事の全部あるいは一部を失った組合員は連絡を頂きたい。組合費の免除あるいは減額措置の制度が適用可能である。チェックオフ制度に加入している場合やその他の組合費自動支払いを行なっている場合でも後日払い戻しなので自動支払いそのものを停止する必要はない。組合費に関して質問がある場合はfinance@generalunion.org にメールを。
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G. ゼネラルユニオンはみんなに開かれた組合である
組合への加入はあなたの権利を守るだけでなく、全ての労働者を支援する道を拓く。
教育関連産業で働く全ての労働者のための我々の活動はこれから一層強化される。
「組合費を払うのが困難」という人であっても、組合未加盟の人であっても、我々は援助することを拒むことはない。
我々が全ての労働者のために活動するのは、世界中の労働組合運動への連帯の意思表明でもある。
あなたが加入すれば我々はもっとみんなのために活動できるようになる。
失業などで今組合費が払えないとしても、職を得るまでの間組合費免除や減額で組合に加入できる。加入が最も肝心なのだ。
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