2019年2月22日付厚生労働省労働基準局長発の文書に寄せて

May 1, 2019

2018年4月1日からこの無期転換が始動した。全体としては大混乱もなく順調に進行したが、その一方、少なからぬ雇用主はこの無期転換を「労働者を気軽に雇い止めできなくなる」として毛嫌いし、無期転換から逃れようと策を弄し、更には「雇止めして何が悪い」と開き直っている雇用主さえいる。かくして、無期転換をめざす労働組合の闘いは各地で継続し、一部では法廷へと闘いが持ち込まれているところもある。

 

また2013年12月13日には「研究開発システムの改革の推進等による研究開発能力の強化及び研究開発等の効率的推進等に関する法律及び大学の教員等の任期に関する法律の一部を改正する法律(通称「特例法」)」が公布され、研究機関や大学に勤務する有期雇用契約の研究者・教員の中で所定の要件を満たす一部の者については、改正労働契約法第18条に基づく無期雇用契約への転換申込権の発生が「継続勤務5年超」であるものを「継続勤務10年超」とする特例が認められた。
ところが一部の大学は、本来その対象が限定され、手続きにも定めがあるこの特例を「5年での無期転換逃れ」に濫用し、「非常勤教師は全員がこの特例の対象だから、継続勤務が10年超にならないと無期転換は認めない」と執拗に主張し続けている。

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2つの文書
こうした中で2019年2月22日、厚生労働省労働基準局長はほぼ同一内容の2つの文書を発出した。「関係団体各位 労働契約法の無期転換ルールの円滑な運用について」「各府省担当部局長殿 独立行政法人、特殊法人、国立大学法人等における無期転換ルールの円滑な運用について」というこれらの文書は、無期転換が始動して約1年が経過した時点で、所管官庁がその立場から現状を分析し、関係者に注意を喚起したものである。従ってその内容は、上述した現状を反映したものとなっている。

無期転換に関しては以下のように述べている。
「無期転換ルールの適用を意図的に避けることを目的として、無期転換申込権が発生する前に雇止め等を行うことは、労働契約法の趣旨に照らして望ましいものではなく、慎重な対応が必要です。
・無期転換申込権が発生する5年を経過する直前に、一方的に、使用者が契約の更新上限(例:有期労働契約の更新は5年を超えることができない)を就業規則に設け、これに基づき無期転換申込権の発生前に雇止めを行うこと
・契約更新上限を設けた上で、形式的にクーリング期間を設定し、当該期間経過後に再雇用することを約束した上で雇止めを行うこと

また、「特例」については以下のように述べている。
「研究開発法人や大学等と有期労働契約を締結した研究者、教員等については、科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律(平成20年法律第 63号)及び大学の教員等の任期に関する法律(平成9年法律第 82 号)により、無期転換ルールの特例が定められておりますが、当該研究者、教員等であることをもって、一律に当該特例の対象者となるものではないことに留意が必要です。」

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諦めの勧め

ここまで読み進んて、「これは自分のところのことではないか」と思い当たることがあり、冷や汗がにじみ出た雇用主も少なくないはずである。それは多分当たっている。
無期転換逃れのあれこれを企てについては、既に2018年11月5日に開催されたゼネラルユニオンも含む全国一般傘下組合と関係中央省庁との交渉でも報告され、討議され、その後も今日に至るまで情報交換と質疑は継続している。だから、「ゼネラルユニオンが知っていることは関係中央省庁も知っている」のであって、上記の厚生労働省労働基準局長発の文書も、こうした経過の反映でもある。

従ってゼネラルユニオンは、身に覚えのある雇用主に勧める。
5年無期転換についても「特例」―10年ルールの濫用についても、「有期雇用契約労働者の雇用の安定」という関係法の趣旨から逸脱した脱法の試みは、早く止めるに越したことはない。それは所詮「悪あがき」に過ぎないのであって、長く引っ張れば引っ張れば程その分傷は深くなり、支払うべき代償は大きくなるからだ。

なお、「特例」―10年ルールについては近日中に改めて稿を起こす予定である。


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