阪神大震災

10月 2, 2018

阪神淡路大震災は、「労働情報」読者にも大きな被害・影響を与えた。関係各労組は被災者の掌握に奔走する一方、震災直後からボランティアとして全面的な救援活動を開始した。
もちろん、地震は天災であるが、人災が加わり、被害を一挙に拡大+させたことは否めない。政府や自治体はなぜ、かくも対応が遅れたのか。また、今後、噴出する生活・労働問題にどう対処すべきか。
被災者が、真っ暗な阪神間の焼け跡をひたすら歩き、先に開通した満員の買い出し電車で着いた大阪梅田は、震災前と変化のない不夜城である。政府や、大阪など各県への批判は厳しいものがある。

 

もし地震発生が1-2時間遅かったら、もっと被害は拡大していたであろう。家庭や工場が使っていた火により、さらなる大火災が起きていたであろう。道路は、バスとマイカーで一杯、電車はラッシュで超満員であったろう。
新幹線は、偶然始発13分前の間一髪であった。橋桁が各所で落ちた京都~姫路間だけでも、数分おきで十数編成が行きかう。時速200キロ以上になれば、橋桁落下どころか、数センチのレールの段差だけでも、新幹線一編成で千数両人という乗客が、空中にすっ飛んでしまっていただろう。

「活断層の上の大都会」と、今頃言われても困るし、高速道路や新幹線の欠陥・手抜き工事の指摘が一斉に始まったのも、いかにも遅い。「橋脚の中に木材が」「鉄筋の10センチ間隔が、30センチ間隔だった」「コンクリートにアルカリ骨材反応、鉄筋にサビ」などが、その例であるが、全日建関生支部が相当以前から政府に対して指摘し、改善を求めてきていたことである。鉄道被害が最も大きかった東灘区の住吉川周辺は、戦時中、阪神風水害の洪水で何メートルもの土砂で線路が流失したが、軍部の命令で、わずか1週間程度で運行を再開したまま、現在に至っていた。鉄道や高速道路の復旧が、応急処置や(崩壊前と同程度の)復元であってはならない。地震発生時に「身を守る唯一の方策」はロースピードしかない。

「神戸市株式会社」と言われた行政は、特にその部分で手痛い教訓を思い知らされた。人工島造成がその典型であり、六甲アイランド・ポートアイランドなどでは、唯一の橋も壊れ、市民は不安な孤島暮らしを余儀なくされた。それなら(環境に配慮しつつ)崩れたコンクリートで、地続きにしてしまったほうが、安全であろう。神戸沖空港・オリンピック(埋立地で計画)なんて、みんな中止を決定しよう。もちろん、原発はやっぱり全面中止しかない。
膨大なボランティア活動が中心となり自衛隊の影がうすい結果となったためか、産経や読売新聞は「自衛隊違憲論の港湾関係労組の反対で接岸できず、自衛隊の救援船が遅れた」と報道した。こんな事実はまったくなく、意識的なデマ情報であった。全港湾労組は、これらマスコミに強く抗議を行い、各社から謝罪文をとり、訂正報道をさせた。

被災者をかかえた各労組も、1月17日からこれまでは、職場ごとに同僚や家族の安否を尋ねることで職一杯であったが、現在は、各地で全面展開している。幾つかの教職員、組合が共闘し、救援・捜索作業が続いているし、崩れた郵便局で、消思を確認しながら救援物査を配達している仲間も多い。神戸市役所構内にある「兵庫県労組共闘」は、市職・県職・全港湾・国労などが中心であることもあって、まさに震災の真っ只中、全国の自治体労働者(水道・医療など)と共に、不眠不休で頑張っている。
現在、どの労組も全力投球で救援を続けており、「組織力や輸送力があるボランティア」として頑張っている。全国の国労闘争団も多数現地入りしており、炊出し・介護・針灸・僧侶・通訳など多彩なボランティアの申し出も、続いている。
関西の労組が掌握している被害と救援状況の例を紹介すると、

▼タカラブネでは、アルバイトの方が死亡し、出勤途中の仲間が、高速道路倒壊に巻き込まれた。工場は水道・ガスもなく操業不能で、京都本社から、山陰道経由で救援隊が、神戸エ場に到満した。
▼全日建関生支部では、臨海部に生コン工場が多いこともあって、約15社が被害を受けた。しかし、一刻も早い復興のためにも、大量の生コンクリートが不可欠だとして、操業継続で頑張っている。また関西生コン会館は、ユニオンネットワーク・全労協・ゼネラルユニオンなどの救援物資の集約センターにもなっており、農業団体労組連・三里塚・新潟県職などから、米・野菜・果物などの救援物資が集まり、続々トラックで阪神間に運ばれている。
▼全港湾関西地本傘下では、神戸・弁天浜・阪神・建設支部などの被害が特に甚大であるが、未だ家族を含めた全員の安否や、家屋の全半壊も含めた被害を、十分には集約できていない。この間、連日船をチャーターし、崩れてしまった神戸港に上陸、また陸路オートバイ隊で、仲間の捜索と緊急物資を運びこんだ。

他にも、根本的対策を急がないと、大量の失業発生が必然である。
行き場のない外国人労働者は、阪神間に居住が多く、ゼネラルユニオンでも、芦屋のポニーンさんという24歳のアメリカ人女性が死亡し、海外でも大きく報道された。また、サイモン書記長宅(大阪府豊中市)や丹羽書記次隆宅(宝塚市)も壊れ避難中、というリアルな状況であった。

さっそく「春闘中止」を表明した大労組もあるが、ほとんどの労組は、「生きていくための賃金と雇用の確保」などを掲げた「震災春闘」を、存亡をかけて闘わざるをえない。倒産、解雇、雇用危機が未だあまり取り上げられていないが、爆発的に急増しそうなのが、労働問題。特に大量解雇の到来であろう。新聞では「日本経済は大丈夫」「3万社倒産か」と、無責任な観測記事が流されている。事業所が倒壊していなかったとしても、長期の操業停止(従業員の死傷、材料・部品・エネルギー不足)で、危機的である。こんな時、全国各地に事業所をもつ大企業は、やはり安泰である。地震後の復興で、一脇、大企業の系列化が進む可能性すらある。
それは、賃金未払いから始まっている。1月末にまともな賃金が支払われていない企業が相当あり、しかも、これが「最後」かもしれない。経営者が亡くなった所もあるし、会社が倒壊してしまった場合もある。だがそうでなくとも、実際操業ができなかったり、同じ境遇の他社からもらった手形が、不渡りで連鎖倒産するかもしれない。さらに「ただでさえ不景気で展望がない」として、この際、廃業を提案する所もあろう。

でも、そのすべてに労働者の雇用問題がからんでくる。倒産が不可抗力納得できないし、「経営意欲がない」と言われても同意できない。また、悪質な経営による「便乗解雇」も横行するであろう。
千差万別であるが、いずれの場合でも、大量失業がでることに変わりはない。それを防ぐために、とりあえず、各労組は「地震被災者合同労組」になろう。そして、全組合員がボランティアとして、地震被災者の生活相談や労働労働相談(本号Q&A参照)に積極的に参加しよう。そして、必要に応じて、事業主(親会社・銀行・商社を含む)に対し、賃金支払いや仕巍保障を要求し、団交を通じて、早期の解決をめざそう。

 

 

Related