語学産業トーザで大型倒産=労組が全面支援で活躍

10月 2, 2018

会社に抗議すると、直ちに賃金は支払わるのだが、また繰り返される。とうとう「二度と遅れません」と社長名の謝罪文まで各くハメとなった。だが、社内では「ゼネラルユニオンはうるさいから外国人だけは遅配するな」という指示が出ていた。
日本人スタッフへの遅配は改善されず、労組のなかった関東では2~3カ月の遅配さえ発生していた。3月に関東では8校に半減、4月2日には「家賃の不
払」で、渋谷・お茶の水校も閉鎖。生徒と職員のパニックが一挙に拡大した。倒産手続きさえせず、トップが経営を放置するなか、生徒が詰めかけ、各窓口は混乱の極に達した。
4月10日、矛盾と危険を感じた教職員は、一斉に学校から避難したが、そのあと会社は、「弊社従業員のストライキのため閉鎖」との虚偽掲示を各校前にした。いくら働いても賃金が出ず、生徒との対応で疲れ切った未組織の教職員に、このレッテルは残酷だった。数日後、怒った生徒たちの映像が、テレビや新聞をにぎわし始めた。そして、全労協東京労組や全労連全国一般にも駆け込みが始まった。

 

これ以前の2~3月、関西でもトーザ(アレス)の日本人女性スタッフ20名が揃ってゼネラルユニオンに加盟してきた。東京からの混乱した情報が急を告げ、関西でも一カ月の遅配があるなど、ひとごとではなかったからだ。しかも生徒から「トーザは大丈夫か」と間かれ返事に困るなど、ストレス一杯の毎日。そのため労組で出会った日本人・外国人たちは「生徒に迷惑がかかる可能性がある。新規の入学受付はストップしよう。過去2年間のサービス残業を復元し申告しよう」「入金を本社に送らず、集金ストを」などと、連日深刻な討議を始めざるを得なかった。

3月以降の団体交渉には、佐藤社長を引きずりだし、全員で怒りをぶつけた。社長はもはや抵抗できず、非常時用の労働協約に署名した。だが、このことは「倒産必至」ということでもあった。

4月11日、関西各校の教職輿を対象とした緊急説明会が、ゼネラルユニオン・トーザ支部主催で開かれた。数十名収容可能な大阪教育合同労組の会議室に150名もの人が出席し、喧騒の中、会場に入りきれない、80名の外国人講師は、いつも、ゼネラルユニオンがバーベキューに使用している近くの河畔公園に移動。暗がりでブルーシートを何枚も敷き詰め、ハンドマイクで英語の緊急集会が続く、という事態となった。

一方加盟の大半が女性の日本人集会は、会議室で、立ち見など満員電車状態で開催された。「できる限りのレッスンを継続」を両集会で決議したものの、倒産はカウントダウン状態となっていた。この夜だけで、新たにゼネラルユニオンに加盟した人は、100名を越えた。翌日、無責任に逃亡した社長に代わって、ゼネラルユニオンの記者会見が大阪地裁でもたれた。「悪いのは乱脈な経営者であり、被害者は生徒と教職員」「前売りレッスン券乱売などNOVAをはじめとする業界全体に警鐘を」といった訴えは、テレビと新聞に大きく取り上げられた。そして、同趣旨の労組アピールは、関西の全校玄関にも掲示された。

会社は「閉鎖」以外、法的手段の準備さえしておらず、自己破産もやっと5月、申し立てたところだ。被害生徒は全国で1万人、未使用チケットの前払い金は約30億円という。桂三枝さんが中国語の生徒だったこともあって、吉本興業からも激励があるなど、ゼネラルユニオンの電話が鳴り響いている。そこではトーザの組合員が「返済の終わっていないクレジットについては返済不要。銀行口座自動引き落としの解約と相手への通告」などをアドバイスしている。

一方、ほぼ全国大手の英会話学校全社にゼネラルユニオンの支部があることか
ら、「トーザの未使用チケットを、労組の紹介により、無料で他社でも使える」制度が具体化しつつある。組合たちはその一方で、自らの雇用保険・未払賃金立替払制度・ビザ更新などの、加入や支給作業のため、労組会議室に出勤し、ボランティアで挑んでいる。また、対立させられてきた教職員と生徒たちは、労組と生徒会という形でスクラムを組み始めた。

「業界各社はもっとまともな経営をしろ」「行政の責任はないのか」という声
も高まっている。この大型倒産をパニックと、労組と消費者との美談だけに終わらせないため「社長がいなくとも、我々だけで自主識座が続けられないものか」などの模索も始まった。

 

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