こうした事態の始まりは、何年も前に学校が従業員を社会保険に加入させなかったことだった。
これらの従業員は組合に加入し、社会保険への加入は実現した。だが、一人の組合員は9年間に及び学校が年金に加入させなかった結果、その分だけ年金の受給額が減少することとなった。
組合はこの組合員が定年退職するにあたって、適切な金額を支払うことでこの問題を解決することを学校側に提案した。
だが、大阪外語専門学校はこれを拒否した。
従業員の社会保険非加入の責任は雇用主にある、ということについては過去の多くの判例が示しているのだが、彼等は裁判の道を選ぶことにしたのである。
このとんでもない経営側の姿勢は賃金交渉において如実に示される。
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2013年(そしてこれ以降毎年)、組合員はそれまで続いてきた賃金抑制を打破すべく賃上げとボーナスとを要求した。
大阪外語専門学校の答はいつも同じである。「財政的に厳しいので要求には答えられない」。
本当にそうならわかる。
大阪外語専門学校が倒産し職を失うことを望んでいる組合員はいない。だから我々は学校側に、その「厳しい財政状態」を証明するために財務諸表を見せるように求めた。
決して公表はしないという約束の元に限られた組合員だけが見る、ということでもいいとさえ我々は言った。財務諸表で財政状態を確認し、それを基に交渉も行ない、厳しい経営状態については外部には公表しない、ということでもいいと譲歩したのだ。
学校側は応じたか。「否」であった。
団体交渉には誠実な態度で臨まねばならない。「要求に応じられない」と明言するのであれば、それを裏付ける事実と証拠とを示さねばならない。
こうした信頼関係なしでは、団体交渉はウソの言いっ放しの場になりかねないのだ。
この点を明確にするために、我々は大阪外語専門学校を被申立人として、大阪府労働委員会に不当労働行為救済申立を行なった。
大阪府労働委員会は我々の申し立てを認める救済命令を出した。
組合に謝罪し、我々の財務諸表(大阪外語専門学校が主張する「厳しい財政状態」というのが本当に正しいということを証明するためのもの)閲覧要求に応じるように命じたのである。
話はここで終わる、はずだった。
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これぞムダ金、なのだが、なんと大阪外語専門学校は大阪府労働委員会を訴えたのである。
この裁判は現在も進行中である。
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我々は再び賃上げとボーナスとを要求した。
大阪外語専門学校の回答は何があっても相も変わらず「お金がない!」だった。
だから我々は単純な約束を求めた。「お金がないのだとしたら、いかなるものであっても大阪地方裁判所の判決を受け容れ、控訴を行なわず乏しいお金を浪費すべきでない」と。
大阪外語専門学校の答はこうだった。
「判決を見るまでは何も約束できない」。
大阪外語専門学校は「お金がない」と一方で言いながら、更にムダ金を使うつもりのようである。
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以下が確かな事実である―
大阪外語専門学校は学校法人文際学園の一部で、東京にも比較的新しい学校を所有している。
東京の様々な情報からその賃金を見てみると、東京の学校は経営は順調なようだが、大阪はそうでもないようである。
大阪外語専門学校の生徒数がここ数年かなり減少しているのは確かな事実だ。
だがその一方、ここ数年、常勤の教職員には入れ替わりなどはなく、また、長年常勤の外国語教師の採用も行なっていない。
その代わりにたくさんの非常勤教師に依拠して成り立ってきている。
二棟の建物を売却して管理施設を縮小した。
学校が「うまくいっている」のかそうではないのかを見定めるために、二組の証拠を吟味してみなければならない。
第一:多額の人件費と施設管理費の削減及び建物売却による利益は、大阪外語専門学校の生徒数削減を相殺しているか。
第二:大阪外語専門学校は大きな法人の一部である。同校の閉鎖を法人が目指していない限りは、この事実を考慮に入れなければ近視眼的評価に陥る。大阪外語専門学校はうまくいっていないが学校は成長させたいと思っているのであれば、資金を投入してでも従業員の暮らしを守り改善しなければならない。そうしないことは、根本的に正当性を欠くことになる。
学校法人文際学園の法人としての全体的業績については、我々はあまり知らない。
インターネットを通じて収集した情報によれば、東京の学校に勤務する常勤の給与には4カ月分のボーナスがある(大阪の常勤組合員のボーナスは0.5カ月分もない!)。また東京校の求人広告によれば、10年勤務すれば年収は700万円程度、となっている。
帝国データバンクにはいろいろな情報がある。
だが学校法人文際学園のこの2年分の損益計算書は掲載されておらず、最新の売上高が28億5千万円であることは掲載されている。
文際学園がその利益を無駄な裁判に注ぎ込んでいなかったことを願う。
経営陣に透明な経営を行なうことを要求しよう。
「お金がない」と言うのなら、帳簿を公開し見せなければならない。
何よりも、「お金がない」というのなら愚かな行為にお金を浪費すべきではない。
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