骨子案では、高齢者にも高い働く意欲がみられる現状があるとした上で、「繰り下げを70歳以降も可能とするなど、より使いやすい制度とするための検討を行ってはどうか」と記した。具体的な年齢は盛り込まれなかったが、7月の検討会では委員の1人から75歳まで延ばしてもいいとの意見が出た。
(2) 「働き方改革法案要綱」を答申
厚生労働省の審議会は、「働き方改革」関連法案の要綱を9月15日、厚生労働大臣に答申した。
「働き方改革」の関連法案は、時間外労働の上限規制や終業と始業の間に一定の休息を設ける「勤務間インターバル」の導入、働いた時間ではなく成果で報酬を決める「高度プロフェッショナル制度」の創設などが含まれている。野党から「残業代ゼロ法案」などと批判が強い「高度プロフェッショナル制度」について、改正案は年間104日以上の休日など、以前、連合が要求した修正を反映したものとなっている。政府は関連法案を今月下旬に招集される秋の臨時国会に提出する方針。
答申概要(日本語)
(3) トランスジェンダーの人の通称名を健康保険組合などの保険証にも認める
厚生労働省は、心と体の性が一致しないトランスジェンダーの人を対象に、「国民健康保険」に加えて、「健康保険組合」や「協会けんぽ」などの健康保険証にも、戸籍上の名前とともに通称名を記載することを認める通知を出した。
トランスジェンダーの人が、医療機関を受診した際に戸籍上の名前を呼ばれ、精神的な苦痛を感じるケースが指摘されていることから、厚生労働省は2016年7月、「国民健康保険」の健康保険証に戸籍上の名前とともに通称名も記載できるようにしていた。
その後、他の公的医療保険にも広げてほしいという要望を受けて、厚生労働省は、大企業の従業員らが加入する「健康保険組合」や、中小企業の従業員らが加入する「協会けんぽ」、75歳以上の人が加入する「後期高齢者医療制度」の健康保険証にも、戸籍上の名前とともに通称名を記載することを認める通知を先月末に出した。
健康保険証に通称名を記載するには、トランスジェンダーであるという医師の診断書に、社員証の写しなど通称名が日常生活で使われていることを示す書類を添えて、加入する公的医療保険の運営者に申し出る必要がある。
通知(日本語)
2. 法違反・闘い
(1) 外国人実習生のうつ病をパワハラが原因の労働災害と認定
東京都内の建設会社で技能実習生として働いていたカンボジア人の男性(34)がうつ病を発症したのは職場でのパワーハラスメント(パワハラ)が原因だったとして、立川労働基準監督署(東京都立川市)が労災認定したことがわかった。男性と、男性が加入する労働組合などが9月12日、記者会見して明らかにした。認定は6月7日付。
立川労働基準監督署の認定によると、男性は2014年7月に都内の建設会社に入り、上下水道の配管工事を担当。複数の日本人の上司から日常的に「バカ、この野郎」と暴言を受けたり、ヘルメットの上から頭を小突かれたりしていた。胸ぐらをつかまれて押し倒される暴行を受けたこともあり、2016年3月にうつ病と診断された。立川労働基準監督署は、上司の言動は業務指導の範囲を超えた人格否定で、うつ病発症の原因になったと判断し、労働災害と認めた。男性は実習生を支援する労組の協力を得て労災を申請していた。今月帰国し、うつ病の治療を続けるという。
(2) 日本郵便の非正規格差は「一部違法」:東京地方裁判所が賠償命令
日本郵便(東京都千代田区)の非正規社員3人が、正社員との間で手当などに格差があるのは違法だとして計約1,500万円の支払いなどを求めた訴訟の判決で、東京地方裁判所は9月14日、「非正規社員に年末年始勤務手当や住居手当が全く支給されないのは違法」と認め、計約90万円の賠償を命じた。
判決は、3人の職務内容や同社の賃金規定などを検討し、年末年始勤務手当については「最繁忙期の勤務に対する対価で、非正規社員に支払われないのは不合理」、住居手当についても「転居を伴う異動のない正社員にも支給され、非正規社員に支給されていないのは合理的ではない」と判断。前者は正社員の8割、後者は6割を支払うべきだとして原告1人につき4万~50万円程度の賠償を認めた。
一方で判決は、労働契約法20条の規定について「同一労働同一賃金の考え方を採用したものではなく、正社員と非正規社員の間で賃金制度上の違いがあることを許容する」と指摘。非正規社員側は、早出勤務手当▽祝日給▽夏期・年末手当▽夜間特別勤務手当--などについても賠償を求めたが、判決は「不合理な相違とは言えない」として退けた。
原告側は訴訟で「将来にわたる労働条件の是正」も求めたが、判決は「労働条件の不合理の解消は、労使の交渉の結果も踏まえて決定されるべきだ」として退けた。この点や、賠償額が正社員の6~8割となった点を不服として原告側は控訴する方針。それでも、今回の判決は、政府が「同一労働同一賃金」の実現を掲げる中、その動きを後押しするものと言えそうだ。
3. 情勢・統計
(1) 永住権ない外国人に向け住宅ローン提供開始へ:東京スター銀行
外国人の労働力を確保する新たな取り組みが銀行で始まる。これまで、日本で働く外国人が住宅ローンを組むには、ほとんどの場合、永住権が必要だった。しかし、多くの人が短期の就労ビザを繰り返し更新し、数十年にわたって滞在し続けていて、8割は永住権を持っていない。こうした中、永住権がない外国人でもより簡単に住宅ローンを組めるようになる。
永住権を持たない外国人労働者は、これまで配偶者が日本人の場合など一定の条件のもとでしか住宅ローンが組めないのが一般的だったが、東京スター銀行は9月14日から、永住権を持たない人にも住宅ローンの提供を始める。労働人口の減少で外国人の雇用が重要性を増す中、日本で長く働くにあたって、家や分譲マンションを買いたいというニーズがあるとみて今回、住宅ローン提供開始に踏み切った。
(2) パート労働者の年金加入は1,742人:500人以下の中小企業
厚生労働省は9月13日、500人以下の中小企業で働くパート従業員らの2017年6月末現在の厚生年金への加入状況(速報値)を公表した。全国1,270事業所で、計1,742人の従業員らが加入していた。労使の合意が必要だが、4月から任意で加入できるようになった。
詳細(日本語)
(3) iPS細胞研究所の「ご支援のお願い」が話題に “9割以上が非正規雇用”の現状に「もっと優遇されるべき」の声
ノーベル生理学・医学賞を受賞した山中伸弥さんが所長を務める京都大学iPS細胞研究所(CiRA)の「支援のお願い」がネット上で注目されている。[iPS細胞研究は長期的に活用できる資金が必要不可欠であるとして寄付を呼びかける内容。
山中さんは支援を呼びかけるページで「財源のほとんどが期限付きのものであるため、弊所の教職員は9割以上が非正規雇用」と研究所の実情を明かしている。最先端の研究をしている研究所でも資金繰りに苦労し、正規雇用ができないという実情にネットからは「知的エリートはもう少し優遇されても良い」「将来性があるのに企業も乗らないのはおかしい」などの意見があがった。
呼びかけ(日本語)
(4) 高齢者は総人口の27.7%、90歳以上が初の200万人超え-総務省
総務省は9月17日、65歳以上の高齢者の推計人口を公表した。9月15日時点で前年同期を57万人上回る3,514万人となり、これまでで最も多い。総人口が減少する一方で高齢者は増え続けており、全体に占める割合は0.5ポイント増の27.7%と過去最高を更新した。90歳以上は206万人に上り、初めて200万人を超えた。
2016年の高齢者の就業者数は前年比38万人増の770万人となり、13年連続で増加。15歳以上の就業者総数に占める割合は0.5ポイント増の11.9%だった。少子化で労働力が不足する中、高齢者の就業が進んでいる。
雇用形態では非正規が増えた。16年は前年より33万人多い301万人で、企業役員や自営業者らを除く就業者の75.1%を占めた。
概要(日本語)
詳細(日本語)
(5) 経済団体が長時間労働是正の共同宣言を発表
経団連と経済同友会、日本商工会議所など全国110の経済団体は「長時間労働につながる商慣行の是正に向けた共同宣言」を9月22日に発表した。
宣言は、法令やルールの遵守の確認などに加え(1)発注内容があいまいな契約を結ばないよう契約条件の明示の徹底、(2)取引先の休日・深夜労働につながる納品など、不要不急の時間・曜日指定の発注の自粛(3)取引先の営業時間外の打ち合わせや電話の自粛など6項目を具体的に定めている。
「長時間労働につながる商慣行の是正に向けた共同宣言」(日本語)
(6) 非正規比率、37%に上昇=人手不足を反映-厚生労働省調査
厚生労働省は9月19日、2016年(10月1日時点)のパートタイム労働者総合実態調査の結果を発表した。従業員に占める非正規社員の比率は37.2%で、5年前の前回調査に比べ2.8ポイント上昇した。このうち、パートの割合は0.4ポイント増の27.4%だった。同省は「深刻な人手不足で、正社員の代替要因を確保する動きが増えている」と分析している。
非正規社員の比率は、男性が2.3ポイント上昇の22.6%、女性が0.6ポイント上昇の55.0%。産業別では、宿泊・飲食サービス業が68.7%と最も高かった。
この調査はほぼ5年ごとに実施。今回は常用労働者5人以上の事業所約1万7,000カ所を対象に行なった。
「平成28年パートタイム労働者総合実態調査の概況」(日本語)
(7) 「現代の奴隷」、世界で4,000万人超―国連報告書
2016年の時点で「現代の奴隷」のような状況に置かれている被害者は世界で4,000万人を超え、その4分の1を子どもが占めるという実態を、国連の国際労働機関(ILO)と国際NGOのウォーク・フリー・ファンデーションがこのほどまとめた報告書で明らかにした。
それによると、2016年に脅しや強要を受けて働かされた被害者は推定2,500万人。結婚を強要された被害者は1,500万人に上る。
推定4,000万人の被害者のうち、加害者が摘発されたり被害者支援制度などを通じて救済や支援を受けたりすることができた人は数万人にとどまった、とされている。
被害者は71%を女性が占める。中でも性産業で働かされている被害者の99%、結婚を強要された被害者の84%は女性だった。
被害者に占める子どもの割合は、結婚強要が37%、強制労働が18%、性的搾取が21%に上る。
報告書で定義する現代の奴隷には、脅しや暴力、強制などによって拒むことや辞めることができない状況で働かされる強制労働や借金による束縛、結婚強要、人身売買などが含まれる。
ILOが独自に発表した児童労働に関する2017年版の報告書では、世界の5~17歳の子どものうち、1億5,200万人が児童労働に携わっていると指摘。このうち7,300万人は、健康や安全、道徳心の発達が直接的に脅かされる仕事をさせられているとした。
共同報告書(英語)
ILO報告書(英語)
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