労組周辺動向 No.16 2017年8月25日現在

Aug 28, 2017

 

(2) 中小企業の働き方改革―政府3作業グループで方策検討へ

政府は、働き方改革の一環として、関係省庁の担当者からなる3つの作業グループを新たに立ち上げ、中小企業や小規模事業者の長時間労働の是正や最低賃金の引き上げなどに向けた方策について検討する。9月にも発足する見通し。

 

(3) 残業規制の中小企業の助成を目的に都道府県に「働き方改革」支援施設

働き方改革の実現に向け、厚生労働省が2018年度概算要求に盛り込む主要施策が22日、明らかになった。時間外労働に上限を設ける中小企業に新たに助成を行うほか、非正規労働者の処遇改善や過重労働防止の方策をアドバイスする「働き方改革推進支援センター」(仮称)を全都道府県に設置する。

「同一労働同一賃金」の実現に向けた施策では、正規、非正規にかかわらず共通の賃金規定や諸手当制度を導入する企業に対し、対象人数に応じて「キャリアアップ助成金」の支給額を加算する。

 

(4) 人手不足が慢性化している労働基準監督官を100人増員へ

政府は来年度、労働基準監督署の専門職員である労働基準監督官を100人増員する方針を固めた。

厚生労働省が2018年度予算の概算要求に関連予算を盛り込む。労働基準監督官は企業に立ち入り調査を実施し、是正勧告や改善指導などを行う。違反者の逮捕、送検など司法警察権も持つ。2016年度時点で、全国321の労働基準監督署に3,241人が配置されているが、労働者1万人当たりの監督官数は0.62人で、ドイツ(1.89人)、英国(0.93人)など欧州の先進国より少ない。

 

(5) 教員の長時間労働改善:事務作業に支援員を配置し教職員3,800人増要求

教員の長時間労働を改善するため、文部科学省は教員の事務作業を代行する「スクール・サポート・スタッフ」を全国の公立小中学校に配置する新制度の導入を決めた。

大規模校を中心に3,600人の採用を目指す。教員の多忙感は学習プリントのコピーや会議の準備などの雑多な事務も一因とされており、外部人材の活用で負担軽減を図る。文部科学省はその人件費の3分の1を補助する。

また文部科学省は、2018年度の公立小中学校の教職員定数を3,800人増員するよう財務省に求める方針を固めた。

2020年度から始まる学習指導要領では小学校では英語が正式に教科化され、小学3~6年の授業が週1コマ(45分)増える。これに対応するため、専任教員を2,200人増員する。専任教員が増えれば学級担任が休憩を取りやすくなり、より授業の準備に時間を費やすことができる。中学校ではいじめや不登校などの生徒指導を受け持つ教員を500人増やす。また、事務職員も400人増員し、管理職も含めて教員が授業に専念しやすい環境を整備する。

また小中学校で、発達障害がある児童・生徒らが必要に応じ別室で指導を受ける「通級指導」の担当や、日本語の指導が必要な外国人児童・生徒らを受け持つ教員も385人増やす。

 

2. 法違反・闘い

(1) 厚生労働省「ブラック企業リスト」401社に HISや水道局も

厚生労働省が「ブラック企業リスト」として話題となった、労働基準関係法令に違反した企業のリストを更新。

公開当初の掲載企業は332社だったが、8月の更新で計401社に増えている。
企業名がリストに掲載されるのは、各都道府県の労働局による公表から1年間。厚労省は今後も、同リストを定期的に更新していく方針だ。

「労働基準関係法令違反に係る公表事案(2016年10月1日~2017年7月31日公表分)」はここで(日本語)。

 

(2) 非正規教員、給料に上限…38都県で内規で

公立小中学校に非正規として勤務し、担任や部活動の指導など、正規教員とほぼ同じ仕事をする臨時的教員について、38都県が、地方公務員法に基づく給料表の通りに年齢などに応じて金額が上がることがないよう、別のルールを設けて給料を低く抑えていることがわかった。

総務省 は、給料制度の運用に問題がある可能性を指摘している。

大阪府、岡山県など9道府県は、年齢や経験に応じて給料表通りに上がるが、熊本県、茨城県など38都県は、給料表とは別に、条例や内規などで上限を設けていた。鹿児島県の給料表の最高は月40万5,600円だが、規定により20歳代後半の給料と同程度の月22万1,200円を上限としていた。

(3) 「東大が無期転換を阻害している」労組、非正規教職員8,000人の雇用危機訴える

東京大学が来年4月から始まる有期雇用者の大規模な無期転換(5年ルール)への対応を拒んでいるとして、東京大学職員組合と首都圏大学非常勤講師組合が8月23日、東京・霞が関の厚労省記者クラブで合同記者会見を開いた。

「このままでは非正規の8,000人が雇い止めされてしまう」「ほかの大学に波及する恐れがある」と主張している。

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労働契約法よりも「東大ルール」が優先?

東大は大学法人化した2004年に、有期雇用の契約上限を5年とするなど、有期雇用にかかわる「東大ルール」を設定した。上限をつけたのは無期雇用との差をつけるためだ。

労組によると、東大は労契法改正前からの上限のため、雇い止めしても有効だとしているという。対する労組は「雇用の安定という法律の趣旨に反している点では変わらない」として、ルールは無効だと主張している。

労組が問題視しているのはそれだけではない。東大は労契法改正後の2012年11月、この東大ルールを変更した。この際、パートタイムの教職員の再雇用について、クーリング(空白)期間を3カ月から9カ月に変更している。

東大の会議資料では、変更の理由について「労働契約法の改正に伴い」との記載がある。しかし、労働者に不利益な変更だったのにもかかわらず、労使合意はなかったという。

労組によると、東大は無期転換の手段として、試験に受かればフルタイムの職員として雇うことを提案しているという。しかし、労組は労契法の趣旨に反することや、パートタイムで働かざるを得ない職員に対する配慮のなさを指摘している。

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対象範囲は1万人前後になる可能性も

労組によると、東大にはフルタイムの非正規職員が約2,700人、パートタイムの非正規職員が約5,300人いる。さらに、この8,000人とは別に、東大には少なくとも1,200人以上の非常勤講師がいると見られる。東大はこれまで非常勤講師を業務委託として扱ってきたが、今春の団交で、労働者性を認めたという。今後は彼らの無期転換も問題になりそうだ。

団交により2004年の法人化前から勤務する480人は無期転換される予定だが、5年の上限やクーリング規定により、合計10,000人ほどが不安定な立場に置かれているという。

 

3. 情勢・統計

(1) 先生に休暇を ”学校閉庁日”を設ける動き広がる

学校の教員の長時間労働が課題となる中、積極的に休暇をとってもらおうと、お盆の期間を中心に学校の業務を一斉に休止する「学校閉庁日」を設ける動きが全国で広がっている。

「学校閉庁日」について文部科学省は「学校全体の業務が休止することで、教員も休みやすくなる。働き方改革の一つとして有効な取り組みだと思う」としている。

 

(2) クレディセゾン、全従業員を9月から正社員に

クレジットカード大手クレディセゾンは14日、嘱託など四つの社員区分を撤廃し、アルバイトを除く全従業員を正社員に一本化すると発表した。「同一労働同一処遇」を掲げる全社員共通の人事制度を採り入れ、深刻化する人手不足の中で人材の確保を目指す。

9月16日から導入する。対象社員は約2,000人。現在は、嘱託、専門職、コールセンターなどのパートに雇用形態が分かれ、総合職の社員とは給与制度などに差がある。この区分を撤廃して無期契約の正社員とし、賞与を含む給与体系や福利厚生を統一する。評価制度は、仕事の役割に応じた等級制度を採り入れる。

働き方に制約のある社員が柔軟に働けるよう、1時間単位の有給休暇取得や育児・介護以外の理由での短時間勤務制度も導入する。

 

(3) 帝国データバンク発表:女性登用に対する企業の意識調査(2017年)

帝国データバンクは8月15日、「女性登用に対する企業の意識調査」の結果を発表した。

調査結果の概要は以下。

・女性管理職がいない企業は49.2%と半数近くとなる一方、「30%以上」とする企業の割合が増加しており、女性管理職の割合は平均6.9%と前年比で0.3ポイント上昇。また、従業員全体の女性割合は平均24.6%で同0.4ポイント上昇、役員は平均9.3%で同0.6ポイント上昇

・女性社長の企業では、女性管理職割合は平均20.5%、役員は平均40.0%で、男性社長の企業より10ポイント以上高い

・今後、自社の女性管理職割合が増えると見込んでいる企業は24.0%

・女性の活用や登用について「社内人材の活用・登用を進めている」企業は43.0%で4割を超えている一方、「社外からの活用・登用を進めている」企業も12.7%。その効果は「男女にかかわらず有能な人材を生かすことができた」が約7割で突出。特に、従業員数の多い企業で効果を高く実感する傾向

・女性が一層活躍するために社会全体として重要な取り組みは、「保育・幼児教育等の量的・質的向上」が58.8%で最多。以下、「待機児童の解消」「ひとり親家庭等への支援拡充」「待遇の改善(同一労働同一賃金など)」「長時間労働の是正」が続く

詳細はここで(日本語)。

 

(4) 最低賃金 全国平均で25円引き上げ 時給848円に

企業が従業員に支払わなければならない最低賃金は、全国平均で25円引き上げられ、時給848円になることが決まった。

25円の引き上げは、最低賃金が時給で示されるようになった2002年度以降、最大の上げ幅となった昨年度の実績と同じ金額。

都道府県別で最も高いのは、東京で958円、次いで神奈川が956円、大阪が909円でいずれも26円の引き上げ。
一方、低いのは高知、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄の8県で、22円から23円引き上げられて737円になった。

新しい最低賃金は来月30日から順次、適用される。

厚生労働省の発表はここから(日本語)。

 

(5) 無期転換権「知らない」8割超、賞与支給は7割が対象外:連合の調査

連合がこのほど行った有期契約労働者への調査によると、一定の条件を満たす場合に無期契約に転換できる改正労働契約法のルールについて、内容を「知らない」と答えた人の割合が8割を超えたことが分かった。正社員との格差も依然深刻で、7割が賞与の対象外と答えた。

ルールの存在や内容をどこで知ったかという問いには「マスコミ」が50.7%で、「勤務先からの説明」は35.9%にすぎない。

ルールの発動を前に、脱法的な雇い止めの発生が今秋以降懸念される。

一方、「契約期間が無期になるだけで待遇が正社員と同等になるわけではないから意味が無い」との設問に同意した人は54.5%にも上る。4年前の調査より約14ポイント減っているとはいえ、半数強が冷めた目で見ていることが分かる。

働き手をつなぎとめ人手不足を解消するには、無期転換だけでなく、処遇の改善が必要ということを示している。

改正法で新設された「不合理な労働条件の禁止(第20条)」との関わりで、格差の現状も聞いている。

ボーナス(一時金)の支給が「正社員と同じ内容・基準」で行われているのはわずか4%で、「異なる内容・基準」は25%、支給対象外は71%にも上る。政府の「同一労働同一賃金ガイドライン案」では、一時金は正社員と同じ基準で支給されなければならないとされている。退職金については、支給割合が1割強に過ぎず、88%が支給対象外だ。

福利厚生関連で「利用できない」と答えた割合は、それぞれ項目ごとに、食堂36%、駐車場45%、休憩室17%、慶弔休暇取得45%、教育訓練51%、健康診断32%となっている。いずれの項目も職場に労組が「ある」と答えた人ほど、利用できない割合はおおむね1~2割程度少ない。

(6) 企業の45.4%で正社員不足、過去最高を更新:社員は「情報サービス」、非正社員は「飲食店」で深刻

帝国データバンクが「人手不足に対する企業の動向調査(2017年7月)」を発表した。

調査結果

1. 企業の45.4%で正社員が不足していると回答、6カ月前(2017年1月)から1.5ポイント増、1年前(2016年7月)から7.5ポイント増加した。正社員の人手不足は、2006年5月の調査開始以降で過去最高を更新した。業種別では「情報サービス」が69.7%と7割近くに達し、トップとなった。以下、「家電・情報機器小売」や「放送」「運輸・倉庫」が6割以上となったほか、「建設」など10業種が5割以上となった。また、規模別では、「大企業」では51.8%と半数を超えるなど、規模の大きい企業ほど不足感が高く、一段とその傾向が強まっている。大企業における人手不足が中小企業の人材確保に影響を与えている

2. 非正社員では企業の29.4%が不足していると感じている。6カ月前からは0.1ポイント減少したが、1年前からは4.5ポイント増加した。業種別では「飲食店」「電気・ガス・水道・熱供給」「各種商品小売」などで高い。上位10業種中7業種が小売や個人向けサービスとなり、消費者と直接的に接する機会の多い業種で人手不足の割合が高い。規模別では、規模の大きい企業ほど不足感が強くなっており、正社員と同様、「大企業」の不足感は一層の高まりを見せている

詳細はここで(日本語)。


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