(2) 小学校教員採用は英語力で優遇―42/68教育委員会
2020年度から小学校で英語が正式な教科になることを前に、各地の教育委員会が英語力の高い人材の確保に力を入れている。朝日新聞が小学校教員の採用を行う68教育委員会を対象にアンケートを実施したところ、42教育委員会が「今年度の採用で英語の能力を踏まえた加点や、試験の一部免除を行う方針だ」と答えた。
文部科学省は今年1月、外国語指導の専門性を考慮して採用試験を行うよう、全国の教委に通知した。優遇措置について、各教委は「英語教育を推進する教員を増やす」(奈良県)や「児童の英語力の向上のため」(茨城県)と説明する。「専門性の高い教諭が少なく、指導には課題もある」(山梨県)と心配する声もあり、川崎市や福岡市など7教委は英会話教室や大学などと連携して教員研修を実施したり、検討したりしている。
小学校では2020年度から新学習指導要領が全面実施され、5、6年生の英語は教科書を使い、評価も行う正式な教科となる。歌やゲームも交えて英語と親しむ「外国語活動」は現在の5、6年生から3、4年生に前倒しされる。
小学校教員の英語力を高めるため、教員採用を実施している全国の教育委員会の約1割が、民間の英語塾などと連携して教員研修を実施しているか、実施を検討している。
(3) 労働時間把握は「義務」に:労働安全衛生法施行規則改正へ
過労死を防ぐため、厚生労働省は、労働安全衛生法施行規則を改正し、従業員の労働時間を適切に把握することを企業などの義務として明記する方針を固めた。
政府は、時間外労働の上限規制を含む「働き方改革関連法案」を秋の臨時国会に提出する予定。関連法施行までに労働安全衛生法施行規則を改正する。
労働安全衛生法は働く人の健康を守るための法律。時間外労働が月100時間を超えた人が申し出た場合、医師の面接指導を事業者に義務づけるなど、労働時間の把握を前提とした仕組みを定めている。ただ、取り組みが不十分な企業もあるという。
そこで、労働安全衛生法施行規則に、労働時間の把握について「客観的で適切な方法で行わなければならない」などの文言を盛り込む。パソコンの使用時間やIC(集積回路)カードによる出退勤時間の記録を想定する。管理監督者を含めた全ての労働者を対象にする。
(4) 社会保険未加入業者の受注を制限:国土交通省が公共事業に関する告示を改正
国土交通省は8月7日、建設現場における社会保険の加入促進に向け、公共事業の施工業者を選定する際、社会保険未加入の建設業者に対する評価を厳格化する方針を固めた。選定に影響する業者の評価基準を告示改正で変更し、社会保険未加入の減点部分を総合評価に反映しやすくする。建設労働者の人材確保に向け、労働環境改善を図る。
また、国土交通省発注の公共工事では今年4月、施工業者の対象を「下請けまで社会保険に加入した業者」に限定したが、この取り組みを市町村発注の公共工事まで拡大することも検討している。
国土交通省の調査によると、雇用保険、健康保険、厚生年金保険のすべてに加入している建設労働者は全体の76%にとどまり、3保険とも未加入の作業員も13%に上っている。元請けから法定福利費(会社が負担する社会保険料)を受け取っていない下請けの加入率が低いほか、型枠工など現場から現場を渡り歩く技能労働者が未加入となっているケースが目立っている。
建設労働者は約3分の1が55歳以上と高齢化が進むなど、人材不足が指摘されている。インフラの整備や維持への悪影響も懸念されることから、人材確保に向けた労働環境の是正が急務となっている。
(5) 外国人建設就労者受入事業に関する説明会の開催
国土交通省は、2020年オリンピック・パラリンピック東京大会等の関連施設整備等による一時的な建設需要の増大に対応するため緊急かつ時限的措置として、2015年4月から外国人材の受入れを開始した。今回、外国人建設就労者受入事業の運用を見直し労働者不足の解消のために外国人労働者を一層呼び込むべく、全国8カ所での説明会開催を発表した。
報道発表はここ(日本語)。
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2. 法違反・闘い
(1) 大阪ガス子会社に是正勧告 警備員の休憩は「労働時間」
大阪ガス子会社の警備会社の「休憩時間」が、実際には労働時間に当たるとして、淀川労働基準監督署から、未払い賃金を支払うよう是正勧告を受けた。
警備員の勤務は24時間交代で、休憩時間でも異常があれば委託元に出動することになっていた。淀川労働基準監督署はこれが「休憩時間には当たらない」とした。
労働基準法は8時間超の勤務の場合1時間の休憩を義務づけている。会社は2年前からの未払い分を支払い、休憩中は出動させないなど働き方も見直すという。
(2) 早稲田大学が「非常勤講師雇い止め」問題で和解
早稲田大学が2013年に突然非常勤講師の任期を5年に設定し、これに反対する非常勤講師側が反発して裁判となっていた問題で、今年4月に大学側と非常勤講師側との和解が成立していた。
非常勤講師の任期を5年に設定したのは、2013年に施行された改正労働契約法によって、有期労働契約が繰り返し更新されて通算5年を超えた場合、労働者の申込みによって無期労働契約に転換できるルール(厚生労働省)が定められたことが要因とされている。さらに大学側は非常勤講師の担当できる授業数の上限も設定、これによって「雇い止め」や収入の大幅な減少が発生することとなり、非常勤講師らと大学との間で団体交渉が行われることとなった。
大学側は「就業規程を制定するのに、手続き通りにやろうとした時、これは事実上できません」などと発言するなど、方針を転換する姿勢は見せなかったという。そのため、労働組合が労働基準法違反の疑いで大学の理事らを刑事告発する事態となっていた。
また、大学側は厚生労働省が禁止している「5年間継続して勤めたら一学期休んでもらう」ルールを制定しようとしたり、非常勤講師の授業数を削減し、偽装請負のような形で講師に授業を依頼するといった法的に問題がある施策も実行しようとしていた。こういった「自滅」もあって和解が成立したようだ。
報道はここで(日本語)。
(3) 宮城労働局・監督指導結果:違法時間外労働49%
宮城労働局は8月8日、長時間労働が疑われる県内の事業場330カ所で2016年度に実施した監督指導結果を公表した。7割を超える244カ所で違法な時間外労働などの関係法令違反があった。
主な法令違反のうち、違法時間外労働は162カ所(49.1%)、賃金不払い残業は54カ所(16.4%)、過重労働による健康障害防止措置未実施は50カ所(15.2%)で見つかった。
違法時間外労働があった162カ所のうち、115カ所で1カ月当たりの時間外・休日労働が80時間を超える労働者がいた。150時間超は20カ所、200時間超は5カ所あった。
法令違反があった事業場の業種別は、接客娯楽が90.5%で最も高く、商業(87.0%)や教育・研究(80.0%)、製造(72.2%)で割合が多かった。
過重労働による健康障害防止に向けた改善指導は、全体の82.7%に当たる273カ所で実施。「月80時間以内への削減」(189カ所)や「衛生委員会等での調査審議の実施」(69カ所)を求めた。77カ所に対しては、労働時間の管理が不十分だとして適切に把握するよう指導した。
(4) 「外国人技能実習生」受け入れ企業の7割で労働基準法違反
厚生労働省は8月9日、2016年に外国人技能実習生を受け入れた企業を視察した結果を発表した。視察した5,672社のうち70.6%に当たる4,004社で労働基準関係法令違反があり、中には実習生に違法な時間外労働を課す企業や給与を支払わない企業など悪質なケースもあったという。
厚生労働省の視察結果によると、2016年に受け入れ先の企業が違反していた点は労働時間が1,348社(23.8%)でトップ。次いで安全基準(1,097社・19.3%)、割増賃金の支払い(771社、13.6%)、衛生基準(531社・9.4%)――と続いた。
労働時間では、実習生に最長約130時間の違法な時間外労働を課していた企業があったという。安全基準では、使用時にケガをする恐れがある機械にカバーを設けるなどの安全措置を行っていなかった企業があった。割増賃金では、実習生の時間外労働時や休日労働時に時間単価300~450円と低水準の給与しか支払っていなかったケースもあった。
また、実習生が労働基準監督機関に労働環境の是正を求めるケースも88件発生。申告内容の内訳は「賃金・割増賃金の不払い」が83件(94%)と大半を占めた。約2年間にわたり技能実習生5人に計約1,200万円超の賃金を支払っていなかった企業もあったという。
「外国人技能実習生の実習実施機関に対する平成28年の監督指導、送検等の状況」はここで(日本語)。
ここでも。
(5) 厚生労働省が「平成28年労働争議統計調査」を公表
2017年8月10日に厚生労働省が「平成28年労働争議統計調査」を公表した。
それによると、2016年の労働争議は、「総争議」の件数は391件、総参加人員69,533はとなっており、前年に比べ、件数は34件(8.0%)減、総参加人員は104,510人(60.0%)減となった。「総争議」の件数は、比較可能な1957年以降、最も少なかった。
詳細はここから(日本語)。
(6) スズキ自動車、工場始業前体操など未払い賃金
スズキは7月24日、相良工場(静岡県牧之原市)で、始業前の体操や朝礼に伴う未払い賃金があったと明らかにした。同日までに、2016年6月~2017年2月分として約500人に計約1,000万円を支払った。6月に島田労働基準監督署から是正勧告を受けていた。
相良工場では始業前、任意で約5分間の体操を実施し、始業後に1~2分程度の朝礼をしている。一部部署で体操が任意参加と伝わっていなかったほか、朝礼を始業前に実施していた部署があり、未払いが生じたという。
3. 情勢・統計
(1) 配偶者が産後休業中の男性の育休取得率は僅か1.49%:201628年雇用均等基本調査結果
厚生労働省は、「2016度雇用均等基本調査」の結果をまとめた。
それによると、女性の育児休業取得者割合(2014年10月1日から2015年9月30日までの1年間に在職中に出産した女性のうち、2016年10月1日までに育児休業を開始した者。育児休業の申出をしている者を含む)は81.8%(2017年5月30日公表の速報版と同じ)となっており、2015年度(81.5%)と比べ0.3ポイント上昇している。
一方、男性の育児休業取得者割合(2014年10月1日から2015年9月30日までの1年間に配偶者が出産した男性のうち、2016年10月1日までに育児休業を開始した者。育児休業の申出をしている者を含む)は3.16%(2017年5月30日公表の速報版と同じ)となっており、2015年度(2.65%)と比べ0.51ポイント上昇し、初回調査(平成8年度)以来過去最高となった。
なお、2014年10月1日から2015年9月30日までの間に配偶者が出産した男性労働者のうち、配偶者の産後休業中に育児休業を取得した者の割合は1.49%となっている。
また、管理職に占める女性の割合は、課長相当職以上(役員含む)で12.1%(2015年度は11.9%)となっており、役職別では、部長相当職6.5%(同5.8%)、課長相当職8.9%(同8.4%)、係長相当職14.7%(同14.7%)となっている。
厚生労働省2016雇用均等基本調査(確定報告)はここで(日本語)。
(2) 6月の名目賃金13カ月ぶり減 夏のボーナス減が影響か
厚生労働省が8月4日に発表した6月の毎月勤労統計調査(速報)によると、名目賃金にあたる労働者1人当たり平均の現金給与総額(パートを含む)は、前年同月比0・4%減の42万9,686円で、13カ月ぶりに減少した。夏のボーナスの支給額が、前年より減った影響とみられる。
現金給与総額のうち、基本給や残業代など、「きまって支給する給与」は同0・4%増の26万1,583円だった。一方、夏のボーナスなど、「特別に支払われた給与」は同1・5%減の16万8,103円で給与総額全体を押し下げた。
物価変動の影響をのぞいた賃金の動きを示す実質賃金指数は同0・8%減で、3カ月ぶりに下落した。名目賃金が下がったことに加え、電気代などエネルギー価格の高騰で消費者物価指数が上昇した影響がでた。
毎月勤労統計調査 平成29年6月分結果速報はここで(日本語)。
概況はここで(日本語)。
(3) 人事院が2017年職種別民間給与と役員報酬の調査結果概要を公表
人事院は、国家公務員の給与勧告(4年連続引上げ)の基礎となった民間給与に関する2つの調査結果を公表した。
民間給与はここ(日本語)。
役員報酬はここ(日本語)。
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