労組周辺動向 No.14 2017年7月28日現在

7月 31, 2017

 「本日労働組合である日本プロ野球選手会は、昨年12月の大会で決議して以来、NPBに求め続け、かつ、拒否され続けている、契約更改の前に、選手が「考える時間」を持てるようにするための制度、具体的には、サッカー・J リーグなどでも行われている、契約内容の事前の書面での通知制度の導入を引き続き求めること、仮に、NPBがその制度の導入を拒否し続ける場合は、やむを得ず、このような選手の要望が、選手全員のアンケート調査をもとにして行われていることを明らかにするために、選手会が今年行った、契約更改満足度調査の結果を公表することや、
今年度のシーズンオフにおいて、若手選手など立場の弱い選手を守るために、当会所属選手全員が一律に、初回の契約更改ではサインせずに保留する、など含めた対応をすることを決議しました。」

これに対して、日本野球機構(NPB)は「(提示額の)数字を一人歩きさせるより、交渉の中身が大事。一律に提示を求めるのは合理性を欠く。真摯(しんし)sincerelyに選手会と話をしている最中に、一方的に発信されたのは残念」と反論した。

 

2. 同一労働同一賃金について非正規社員の79%が賛成:働く非正規社員の実態調査

民間会社が、自社で運営する総合求人情報サイトで「ユーザーアンケート -同一労働同一賃金について-」を実施した。以下はその結果の概要。

・非正規社員のうち、

同一労働同一賃金の考え方に「賛成」 79%

「雇用形態による、“給与の違い”がなくなることへ期待」 74%

・正社員においても

同一労働同一賃金の考え方に「賛成」 69%

・同一労働同一賃金について期待している主なこと

(1) 雇用形態による給与の差がなくなること

(2) 雇用形態による福利厚生の差がなくなる

・非正規社員の49%が「業務内容・業務量でいえば自身と同じ給与になるだろう正社員がいる」と回答。そのうち約30%が、給与差は年収にして100万円以上違うと回答。

・非正規社員に、「同一労働同一賃金の思想であれば同水準の給与を貰うべき正社員がいるか」、また「同じ業務内容、同じ業務量で働く正社員が自身の周囲にいるか」を聞いたところ、49%が「いる」と回答。

 

3. 連合関連

(1) 労働者の4割超「36協定知らない」 連合が調査

働く人の4割超は、会社が残業を命じるには労使協定(36〈サブロク〉協定)が必要なことを知らない――。そんな実態が連合のアンケートでわかった。長時間労働への関心の高まりで、制度を知る人の比率は上がってきたが、連合は今後も周知を進める考えだ。

連合(日本労働組合総連合会)はその「業務内容」として「すべての働く人たちのために、希望と安心の社会をつくる」と謳っている。

この調査は連合が民間調査会社に依頼して行なったものだが、この結果を受けての連合自身の見解や決意などは記載されていない。

アンケートは6月に、20~65歳の働き手1千人(自営業やアルバイトなどは除く)にインターネットで実施。会社が残業を命じるには労使協定を結ぶ必要があることについて尋ねたところ、「知っている」と答えたのは56・5%、「知らない」は43・5%だった。

2014年の同様の調査より「知っている」は約17ポイント上がった。電通社員の過労自殺や、残業時間の罰則付き上限規制が導入の見通しとなるなど、労働時間への関心の高まりも影響したようだ。

年代別では、30~50代の6割弱、60代の7割強が「知っている」と答えた。20代は49.2%と他の世代より低めだ。連合は「36協定の知識がない人がまだ多いのは残念。特に若い世代に協定の重要性が知られるように働きかけたい」(担当者)としている。

「有期契約労働者に関する調査報告」はここ(日本語)。

 

(2) 「残業ゼロ法案」に関する指導部の変節が拒まれる

専門職で年収の高い人を労働時間規制から外す「高度プロフェッショナル制度(高プロ)」を巡る執行部の方針転換を巡って迷走を続ける連合が、この転換を正式撤回した。再び「反対」に転じる。執行部の一部が主導し、いったんは「条件付き容認」に傾いたが、組織内をまとめきれなかった。独り相撲の末に組織は大きく混乱し、内外から批判が殺到。「労働者の代表」としての威信は深く傷ついた。会長らは当初、政府、経団連と「政労使合意」を19日に結ぶ予定だった。

ある産別幹部は「あのまま政労使合意に突き進んだら、組織内のゴタゴタはずっと続いていただろう。最悪の事態は避けられた」と話す一方、「一度要請して、合意の算段を取り付けたことを引っ込めるなんてありえない。向こうのメンツをつぶしたわけだし、当然(執行部の)責任問題になる」との見方を示した。

過労死遺族がつくる「全国過労死を考える家族の会」は26日、連合にへの反対を改めて要望する文書を出した。寺西笑子(えみこ)代表は記者会見でこう注文を付けた。「(問題は)本当に危険な制度が、働き方改革実行計画の中でセットにされていることが問題なんです」

安倍政権は残業時間の上限規制も含む労基法改正案を臨時国会の「目玉」と位置づけており、成立をめざす方針に変わりはない。

 

4. 深刻化する労働力不足

(1) 個別労働紛争相談急増「退職させてくれない」 香川

会社が退職届を受け取ってくれない--。香川労働局や県内の労働基準監督署に2015年度以降、そうした相談が年間300件以上寄せられている。少子高齢化による人口減少で人手不足に悩む企業が、退職を望む労働者を引き留めている現状が浮かぶ。

香川労働局によると、労働条件などで労働者と事業主が争う「個別労働紛争」の相談は2016年度に1,943件あった。1人が複数の内容を相談するケースもあり、相談内容は延べ2,190件に達した。

このうち、退職方法などを尋ねる「自己都合退職」に関する相談は320件。ほとんどが「退職を引き留められた」「会社を辞めたいが辞めさせてくれない」との内容だという。12年度は122件だったが右肩上がりに増え、15年度は約2.8倍の344件になった。

背景には人手不足がありそうだ。県内の有効求人倍率は15年12月以降1.5倍を超えており、今年5月は1.77倍まで上昇。全国7位の高水準で、特に、建設・採掘業6.10倍▽サービス業3.20倍▽輸送・機械運転業2.70倍--などで人手が不足している。香川労働局職業安定課は「景気回復が続いており、有効求人倍率が高水準なのはしばらく続く」とみている。

では、会社が退職を認めない時はどうすればいいのか。民法上は「退職の自由」があり、正社員であれば辞職を申し出た2週間後に退職できる。

香川労働局雇用環境・均等室は「もめないためにも会社の就業規則に従って退職の意思表示をするのがよいが、会社の承諾を得なくても退職できる」と説明している。

 

(2) 正社員求人倍率、初の1倍超え=失業率2.8%に低下-6月

厚生労働省が28日発表した6月の有効求人倍率(季節調整値) は前月比0.02ポイント上昇の1.51倍となり、4カ月連続で改善した。1974年2月以来、43年4カ月ぶりの高水準。正社員の求人倍率は0.02ポイント上昇の1.01倍で、集計を始めた2004年11月以降初めて1倍を超えた。緩やかな景気回復を背景にパートら非正規社員だけではなく、正社員の人手不足感も急速に強まっている。

総務省が28日発表した労働力調査によると、6月の完全失業率(同)は前月比0.3ポイント低下の2.8%だった。改善は4カ月ぶり。

求人倍率は、ハローワークに申し込んだ求職者1人当たりの求人数を示す。6月は全体の求人数が前月比1.5%増え、求職者数は横ばい。正社員の求人数は1.8%増え、求職者数は0.1%減った。

新規求人を業種別で見ると、自動車関連が好調な製造業のほか、人手不足が深刻な運輸・郵便業、建設業などで大きく伸びた。受理地別の求人倍率は、最高が福井の2.09倍、最低は北海道の1.08倍となった。

2017年7月28日厚生労働省発表「一般職業紹介状況(2017年6月分)について」はここで(日本語)。

2017年7月28日総務省発表「労働力調査(基本集計) 2017年6月分」はここで(日本語)。

 

5. 年金いつから受け取れる? 70歳以降も検討へ

公的年金を受け取り始める年齢を70歳より後にもできる仕組み作りを高齢社会対策大綱に盛り込む検討が始まった。内閣府の有識者検討会が大綱の改定案をまとめ、政府が年内に決定する。年金の制度作りを担う会議ではないため、ただちには実現しないが、中長期的な課題として打ち出す。

年金の受給開始年齢は原則65歳だが、60~70歳の間で選ぶこともできる。70歳から受け取り始めると、受給額は65歳から受給するより42%増える。

18日の検討会で、座長の清家篤・前慶応義塾長が「もっと先まで繰り下げ支給の幅を広げる可能性もある」と明かした。働ける元気な高齢者を支援する狙い。検討会では、繰り下げできる年齢について「75歳とか、もっと延ばしてもいい」との意見が出た。

厚生労働省によると、2015年度に国民年金だけを受給した人らのうち、受給開始年齢を65歳より後に繰り下げたのは1・4%だった。利用者が少ないため、検討会では周知を求める声もあった。

高齢社会対策大綱は中長期的な高齢者施策の指針となるもので、約5年ごとに改定されている。

高齢社会対策の基本的在り方等に関する検討会(第2回配布資料はここ(日本語)。

 

6. 増えない賃金

(1) 賃上げ不足、物価を0.2ポイント下押し=日銀展望リポート

日銀は21日、四半期ごとに向こう3年の経済・物価を示す「展望リポート(経済・物価情勢の展望)」を公表し、その中で、人手不足にもかかわらず賃金や物価の上昇ペースが弱い理由について分析した。賃上げが抑制気味であることが、物価を0.2ポイント下押しするとの試算も示している。

有効求人倍率がバブル期ピークを上回り失業率が3%程度まで低下するなど労働需給はひっ迫しているが、消費者物価指数(除く生鮮、コアCPI)は直近で前年比0.4%の上昇にとどまっている。2%の物価目標を目指す日銀には要因の分析が課題となっている。

日銀では1983年から2013年までの期間と比較して、2013年から2017年までの期間では、有効求人倍率が改善するペースに対して、賃金の上昇が大幅に緩やかになっていることを図示した。

パート労働者の時給は労働需給を反映しやすいが、正社員の所定内給与は労働需給との相関が小さく、代わりにベースアップ率の影響が大きいとした。

また、バブル期に相当する1990年前後と、2010年代後半は、実質賃金の伸びが労働生産性の伸びを下回っている状況にあると指摘。この賃上げ不足が、足元では物価を0.2ポイント下押ししているとの試算も示した。

 

(2) 労使の慎重姿勢が重し=人手不足でも鈍い賃上げ-経済財政白書

経済財政白書は2012年末を底とする景気回復が続く中、人手不足感の強まりにもかかわらず、賃金の伸びが鈍い背景を分析した。年功賃金と終身雇用に代表される日本型の雇用慣行の中で、労働者と企業経営者の双方が賃上げに慎重になったと指摘。こうした労使の姿勢が影響し、労働市場で不足感が強まっても賃金に反映されにくい状況になっているとの見解を示した。
有効求人倍率は4月に1.48倍と、バブル期の1990年7月に付けた1.46倍を上回る水準に上昇。一方で、1986~1991年に年平均3.6%だった名目賃金の伸びは、2012~2016年に同0.4%の低水準にとどまった。白書は「現在の労働分配率は02~08年の景気拡大期を下回っている」とし、「企業の賃上げ余地は大きい」と強調した。

しかし、バブル崩壊後の長期低迷により、労働者側は一つの企業での安定的なキャリア形成を優先し、賃金の抑制を受け入れる傾向が続く。企業側も市場環境の急変などで経営が悪化しても賃下げに理解を得るのは容易ではないと考えており、「労使のリスク回避的な姿勢が賃上げを抑制している可能性がある」と分析した。

今後の動向に関しては、「人手不足が深刻化し、企業が労働市場を通じて人材を受け入れる機会が増えれば、職務や能力に応じた賃金決定を行う必要性が高まる」と指摘。人手不足を機に働き方改革などを進めることで賃金の在り方が変化していくと予想した。

2017年度年次経済財政報告はここで(日本語)。

 

7. 最低賃金3%上げ、2年連続で政府目標通り 「中小に負担」反発も

2017年度の最低賃金(時給)の引き上げ額の目安は2年連続で安倍政権の目標通りの「3%」となった。政府目標をにらみながらの議論のなか、経営者側は「経営の厳しい中小企業の負担になる」と反発したが、賃上げによる景気の底上げを狙う政権の方針に沿う結論となった。

最低賃金の引き上げ額について議論する厚生労働省の中央最低賃金審議会の「目安に関する小委員会」は、25日午後に東京都内で最終協議を開始。労働者団体、経営者団体の代表者と学識者らによる議論は、同日夜に決着した。

最低賃金を毎年3%程度引き上げて全国平均を1,000円にするという目標は、3月に政府がまとめた「働き方改革実行計画」に盛り込まれ、今年の議論はこの計画を念頭に進められた。労働者側は「3年以内に全都道府県で最低賃金を800円以上にするべきだ」と大幅な引き上げを主張した。

一方で、経営者側は中小企業の業況判断指数はマイナスが続いており、経営の先行きは厳しいとして「中小企業の実情を踏まえて議論するべきだ」と、賃上げに慎重な姿勢だった。

ただ、経済団体にも引き上げを容認する声があった。経済同友会の小林喜光代表幹事は25日の記者会見で、「中小企業にも急激な引き上げは経営にダメージだろうが、悪い要素だけではない。消費喚起も含めて2~3%の引き上げは必要なのでは」と話した。

とはいえ、今後も「3%」の引き上げが続くかは不透明だ。最低賃金の引き上げ額の目安を決めるうえで重要な参考データとなる中小・零細企業の賃金上昇率は、今年は1・3%だった。前年を0・2ポイント上回ったが、目標の「3%」にはほど遠い。政府目標は2年連続で達成したが、中小・零細企業の賃金の支払い能力が十分に高まったとはいえない状況だ。

最低賃金法第1条(目的)
この法律は、賃金の低廉な労働者について、賃金の最低額を保障することにより、労働条件の改善を図り、もつて、労働者の生活の安定、労働力の質的向上及び事業の公正な競争の確保に資するとともに、国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。

中央最低賃金審議会 (目安に関する小委員会)はここ(日本語)

 

8. 法違反

(1) 違法残業1万事業所=昨年度、是正勧告-厚生労働省

厚生労働省は28日、2016年度に長時間労働が疑われる23,915事業所を立ち入り調査した結果、43.0%の10,272カ所で労使協定を上回るなど違法な残業を確認したと発表した。違反が確認された事業所のうち、従業員の時間外・休日労働が月100時間を超えていたのは5,559カ所(54.1%)と5割を超えていた。

同省の労働基準監督署が立ち入り調査したのは、残業が月80時間超の従業員がいるとされた事業所。2016年4月に重点監督対象となる残業時間の基準を従来の月100時間超から月80時間超に引き下げたため、立ち入り調査先は2015年度の10,185カ所から大幅に増えた。

長時間労働による労働基準法違反が確認された事業所の割合は43.0%で、2015年度の56.7%から下がった。厚労省によると、労使協定の特別条項で残業の限度を80~100時間としている事業所が一定数あり、立ち入り調査の対象になったが労使協定の範囲内のケースがあったという。

長時間労働以外では、労基署が残業代を適切に支払っていないとして是正勧告をした事業所が1,478カ所(6.2%)あった。

「長時間労働が疑われる事業場に対する監督指導結果」はここで(日本語)。

 

(2) “名ばかり管理職”に残業代支払わず―警備会社に是正勧告

全国で事業を行う警備会社の仙台市の支社が、法律上、管理職にあたらない社員12人を管理職と見なして、およそ2,000万円の残業代を支払っていなかったなどとして、労働基準監督署から是正勧告を受けた。

仙台労働基準監督署によると、この会社の仙台市の支社では労働基準法上、管理監督者にあたらない社員12人を管理職と見なして、本来、支払わなければならない過去2年分の残業代、およそ2,000万円を支払っていなかった。

また、法律に基づいて労使で定めた限度を大幅に超えるひと月200時間以上の時間外労働をさせていたケースもあった。

このため仙台労働基準監督署は、ことし5月、未払いの残業代を支払うとともに、勤務管理を改めるよう是正勧告した。

この警備会社では、ほかの支社などに勤務するおよそ250人についても同様に残業代が支払われていない可能性があるとして調査を進めているということです。会社は、「是正勧告を真摯に受け止め改善すべき点について速やかに対応していきたい」と話している。


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