2. 非正規労働者の資格取得を支援…長期の職業訓練:厚生労働省
厚生労働省は今年度にも、非正規労働者を対象とした公共職業訓練に国家資格取得などを目指す期間1~2年の長期コースを設ける方針を固めた。
資格を取ってもらうことで、正社員での就職を後押しする狙いがある。
離職者向けのコースは、ハローワークが訓練の必要があると判断した求職者をあっせんする仕組みで、教材費などを除いて自己負担なしで受けられる。金属加工や介護、事務職などのコースがあり、期間は原則、3~6か月間となっている。
新設する長期コースでは、2級建築士や社会福祉士、精神保健福祉士などの資格を取得してもらう。実際の訓練は民間の専門学校などに任せているケースもあり、来年4月から受講が始まるコースが多くなる見込み。
3. 公立小中学校の教員数が全国で700人以上不足
全国の公立の小中学校の教員の数が、ことし4月の時点で定数より少なくとも700人以上不足し、一部の学校では計画どおりの授業ができなくなっていることが明らかになった。これまで欠員を埋めてきた臨時採用の教員の不足が要因と見られる。
全国の公立の小中学校の教員は、国が学校ごとの児童や生徒の数に応じて毎年、定数を算出し、それをもとに各地の教育委員会が配置している。
教師不足の背景にはこれまで欠員を埋めてきた臨時採用の教員の不足があり、授業が出来なくなっている学校が相次いでいる。
こうした中、「臨時採用」が見つからず「特例制度」を活用した苦肉の策で教員を確保している学校もある。
教員の免許は、幼稚園・小学校・中学校などにわかれているが、この学校では、「いずれかの免許を持っていれば指導能力があることを条件に、3年間に限って免許の範囲を超えて指導できる」という法律で認められた特例制度が活用されている。
文部科学省は全国の小中学校で教員不足が相次いでいることについて、「最近、特に出産や育児などで休職する教員が増えていることもあり、臨時教員の確保が難しくなっている課題があることは受け止めている。子どもたちの学習環境を維持するために必要な教員を確保することは基本なので、国としてもしっかり対応しなければならない」とし、また、て「教員の仕事の負担が重かったり多忙になったりということがネックとなり、教員のなり手を十分に確保できていないことが背景にある。教員の働き方は使命感や、やりがいと表裏一体だと思うので、それについてもどう改善していくか幅広く議論し、人が集まるような環境にしていきたい」と表明している。
また、国が予算を増やすなどして教員採用の在り方自体を見直していく必要があるとの指摘もある。
4. 福井県で労働基準監督署が立ち入り調査:事業所の72%で法令違反
福井労働局は、2016年に福井、武生、敦賀、大野の各労働基準監督署が計1,002事業所に立ち入り調査した結果をまとめた。うち722事業所(72.1%)で法令違反を確認したという。労働時間関係の違反率は26.9%に達し、過去5年間で最高となった。
立ち入り調査は、労働者からの相談や通報などを踏まえて各労働基準監督署が実施。問題があった場合、是正勧告などの行政指導をする。
まとめによると、労働時間関係の違反は270事業所で確認し、違反率は15年の21.5%から5.4ポイント増加した。その要因として、労働時間が正しく把握、記録されていないことや人手不足、取引先の都合による納期変更に伴う長時間労働などが考えられるという。
残業代の未払いなど賃金関係は237事業所(違反率23.7%)、年1回の健康診断の未実施などは230事業所(同23.0%)、労働条件を記した文書の未交付は140事業所(同14.0%)だった。
業種別でみると、トラック運送などの運輸交通業の違反率が83.7%と最も高く、次いで介護施設などの保健衛生業が81.5%。スーパーやドラッグストアといった小売業などの商業は81.4%、製造業は75.9%、建設業は58.9%。
福井労働局は、月80時間を超える時間外・休日労働を確認した事業所に対して指導監督するほか、過労死ゼロを目指して過重労働対策、メンタルヘルス対策を進めていく。
5. 電通の労使協定は「無効」だった
労使協定で定められた残業時間を超えて違法な残業を強いていたとして立件された電通本社が、労働組合と交わしていた労使協定(三六協定)が無効だったことが判明した。ずさんな労務管理の一端といえそうだ。
労働基準法は労働時間を1日8時間、週40時間までと規定し、企業が従業員に残業をさせる場合は、労使が合意して上限を決めた三六協定を結ぶ必要がある。
協定を結ぶ場合、労組は非正規労働者を含む全労働者の過半数で組織されていなければならない。組合員が従業員の過半数を割ると組合が代表でなくなるため、過半数の従業員を代表する「従業員代表」と協定を締結する必要がある。
電通は「労組は正社員の過半数ではあったものの、有期雇用社員の増加で過半数を切っていた」と説明する。
事件を契機に、「三六協定については、労働基準監督署も内容を問うことなく漫然と受理してきた」と労働基準監督署の監督責任を問う声も上がる。
電通は捜査当局の指摘を受けて従業員代表を選出し、改めて協定を締結。法的要件を満たしたとしている。
6. 連合が方針を転換し「残業代ゼロ法案」連合容認へ―組織内から反発も
連合は、専門職で年収の高い人を労働時間の規制から外す「高度プロフェッショナル制度」について、政府に修正を求める方針を固めた。こうした執行部の方針に連合の組織内で強い反発が出ている。
政府は同制度の導入を盛り込んだ労働基準法改正案を国会に提出済みだ。3月にまとまった「働き方改革実行計画」は、改正案の早期成立を目指すと明記。政府は今秋の臨時国会で審議する予定だ。
改正案は、為替ディーラーなど年収が1,075万円以上の専門職を対象に、年104日以上の休日取得▽労働時間の上限設定▽終業から始業まで一定の休息を確保する「勤務間インターバル制度」の導入――から何らかの対策を講じることを条件に、残業や深夜・休日労働をしても割増賃金が一切払われなくなるという内容だ。
野党は「残業代ゼロ法案」などと批判しており、2015年4月に国会に提出されてから審議はされていない。連合も「長時間労働を助長する」などとして法案の取り下げを求めてきたが、これまでの主張を事実上転換する。
連合は、同制度の健康確保措置を手厚くするよう政府に要請する。具体的には、年104日以上の休日取得を企業に義務づけるとともに、労働時間の上限設定▽勤務間インターバル制度▽2週間連続の休日取得▽心身の状況に応じて臨時の健康診断の実施――などから複数の対策の実施を求める。
こうした突然の方針転換に、組織内から異論が噴出している。主要産業別組合の幹部は「ずっと反対してきたのに、組織内の議論を経ずに突然方針を変えますと言われても困る。組合員は納得してくれない」と戸惑いを隠さない。
7. 日銀さくらリポート:人手不足倒産の増加懸念
さくらリポート(日本銀行地域経済報告)では、6地域の景気の総括判断に「拡大」の表現が盛り込まれるなど、日本経済の足取りが一段と力強さを増していることを印象付けた。一方、足元では、企業倒産の減少傾向が「底打ち」するなど、気がかりな点も出始めた。人手不足を要因とした倒産が増えており、体力のない企業は脱落しているのが現状だ。
帝国データバンクが2017年7月10日に発表した全国企業倒産集計によると、1~6月の企業倒産は前年同期比3.2%増の4,247件と、8年ぶりに増加に転じた。運輸・通信業や小売業の増加が目立った。
このうち、労働力を確保できなかったことに起因する倒産は、44.1%増の49件と2年連続のプラスだった。日銀が大規模な金融緩和を始めた4年前と比べ、2.9倍に拡大した。
企業の担当者は「人手不足を理由に計画通りの売上高を確保できない企業や、人件費上昇分を価格に転嫁できずに収益が圧迫される企業が増えることで、さらなる人手不足倒産の増加が懸念される」と指摘する。
人手不足の状況について、日銀は「今は賃金上昇など景気を前向きにさせるプラス効果の方が強い」としながらも、「人手不足は個々の企業にとっては、切実な問題だ」と先行きを注視する考えを示した。
2017年7月 日本銀行地域経済報告(さくらレポート)はここ(日本語)。
8. 未払い賃金請求時効の見直し議論が始まる
2017年7月12日、未払い残業代などを労働者が会社に請求できるのは「過去2年分」までとする規定の見直しに向けた議論が厚生労働省の労働政策審議会で始まった。お金の支払いを請求できる期間を原則5年に統一する改正民法が5月に成立したことを受けた議論だが、請求できる期間を短くしたい経営側と、期間を延ばしたい労働側の意見の対立は必至だ。
労働基準法は、労働者が会社に未払い賃金を請求できる権利が消滅する時効を「2年」と定めている。
1896年に制定された民法は、お金の支払いを請求できる権利が消滅する時効の期間を「原則10年」としているが、例外として様々な「短期消滅時効」を定めている。
賃金の請求権については時効を1年と定めたが、1947年制定の労働基準法は「1年は労働者にとって短い」という労働者保護の観点から、賃金の請求権の時効は「2年」とする特例を定めた。労基法の規定は、民法の例外規定を元に定めたものだ。
年間で最大20日取得できる年次有給休暇の未消化分を翌年まで繰り越すことができるのも、「2年」の時効が根拠になっている。
2017年5月に成立し、6月に公布された改正民法は、お金のやりとりを定めた同法の規定(債権法)を、消費者保護を重視して変更した。お金の支払いを請求できる期限が「原則5年」に統一され、短期消滅時効はすべて廃止される。
これに伴い、民法上はもともと「1年」だった賃金の請求権の時効もなくなる。労基法上の「2年」の規定は民法の水準より短くなり、「労働者保護」に資するとはいえなくなってしまった。
厚生労働省は2017年4月、参議院法務委員会で「消滅時効の在り方について検討する」と答弁し、労働政策審議会で見直しの議論を始めることを表明。7月12日、正式に労使を交えた議論が始まった。
労働側はこの日、賃金の請求権の時効を民法に合わせて「5年にするべきだ」と主張した。社会一般の権利保護を規定する民法が定める期間より短い「2年」のままにしておくことは、労働者保護に反するとの考えからだ。
経団連は「(時効の)改正は実務に相当程度大きな影響がある。多角的な観点から議論を尽くす必要がある」と述べるにとどめたが、できるだけ短くしたいのが経済団体の本音だ。時効が延びれば、未払い残業代の支給が必要な期間も延びるし、時効が「5年」となれば、有休も最大で年100日間まで取ることができる。
未払残業代が問題となったヤマト運輸は過去2年分の未払い残業代約190億円を2017年3月期決算に計上し、営業利益は前年比ほぼ半減の348億円だった。時効が5年で、その間に毎年同規模の未払いがあったと仮定すると、単純計算でさらに約285億円の支給が必要で、営業利益の大半が吹っ飛んでいたことになる。時効の期間の延長が企業経営に及ぼす影響は大きく、今後も労使の意見が真っ向から対立するのは必至だ。
改正民法は2020年にも施行される見通しで、厚生労働省は早ければ2019年の国会に労基法改正案を提出する考えだ。この日の労働政策審議会で「法律の専門家の意見を踏まえる必要がある」との意見もあり、厚生労働省は法学者などを集めた有識者による検討会を立ち上げて論点を整理する予定だ。
厚生労働省労働政策審議会労働条件分科会はここ(日本語)。
同分科会2017年7月12日会議配布資料はここ(日本語)。
9. 教育大学・教育学部の統合を:文部科学省
文部科学省は少子化で教員の需要が減ることをふまえ、国立の教育大や総合大の教育学部に対し、①総合大と教育大、教育大同士で教員の養成機能を統合する②同じ県内や近くの国公私立大で連携して教員養成を分担するなどの方向で、今後、大学側と話し合う方針を固めた。各地の国立の教育大や教育学部の縮小や廃止につながる可能性もある。
2017年7月12日、文科省の「国立教員養成大学・学部、大学院、附属学校の改革に関する有識者会議」がこうした方針で合意した。国立の教育系大学や教育学部は現在、ほぼすべての都道府県に44ある。同会議の最終決定を受け、文部科学省は各大学に対し、2021年度末までに結論を出すよう求める考えだ。
同会議は、いまの組織や規模のままでは「機能強化と効率性の両方を追求することは困難」と指摘。「小規模になる養成機能を大学の間で連携・集約する検討が必要な時期に至っている」とした。まず、各大学・学部に対し、各地の教員需要の減少率に基づき、入学定員を見直し、2021年度末までに結論を出すべきだとした。
加えて、大学や学部の統合のほか、国公立大にとどまらず、近くの私立大まで含めて連携し、採用者数が少ない教科の養成課程を集約したり、各大学が強みや特色を持つ教科ごとに養成機能を分担したりすることを検討するよう求める。国はこうした取り組みの進み具合に応じ、財政支援を検討すべきだとしている。具体的には、統合の際に完全に片方の大学や学部をなくすだけではなく、一部のキャンパスを存続させたり、小学校の養成課程だけを残したりする方法などが想定されている。
教員養成大学・学部については2001年、別の有識者会議が再編統合の考え方を提言したが、県を越えた統合は鳥取大と島根大の間で、島根大に教育学部をまとめた1例のみだった。
国立教員養成大学・学部、大学院、附属学校の改革に関する有識者会議(第9回)
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