文部科学省の2018年度「外国語教育における新学習指導要領」

7月 13, 2017

# 2017年度~2018年度

平成30年度(2018年4月開始)から小学校のカリキュラムは以下のように変わる。

• 小学校6年生:英語は年間35時間から50時間に
• 小学校5年生:英語は年間35時間から50時間に
• 小学校4年生:英語は年間0時間から15時間に
• 小学校3年生:英語は年間0時間から15時間に

これが新しいカリキュラムの移行措置第一段階である。

現在でも小学校1年生~4年生に英語の授業を既に行なっている学校も存在するが、これらの授業は法的に必須のものではない。

だが、2018年度から2020年度の間に、上記の授業時間は必須となる。

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# 2018年度~2020年度

文部科学省の「外国語教育における新学習指導要領」実行の第二段階・最終段階は2020年度である。

平成32年度(2020年4月開始)から小学校のカリキュラムは更に以下のように変わる。

• 小学校6年生:英語は年間50時間から75時間に
• 小学校5年生:英語は年間50時間から75時間に
• 小学校4年生:英語は年間15時間から35時間に
• 小学校3年生:英語は年間15時間から35時間に

従って、小学校6年生、5年生の英語の授業時間は、2018年度から2020年度で年間35時間から75時間へと倍増し、小学校4年生、3年生は同じ期間に年間0時間から35時間へと倍増以上となる。

具体的には、2020年度には小学校4年生、3年生は少なくとも週1時間、小学校6年生、5年生は週2、3時間程度の英語の授業があることになる。

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教科書が変わる

この新しいカリキュラムに合わせて、文部科学省は教科書についても、現在の小学校の英語教科書(”Hi, Friends!”)を、小学校3年生から6年生まで通しの教科書のセットへと変えることを計画している。

我々が知る限りでは、現在(2017年度)の小学校5年生と6年生用教科書の内容がそれぞれ小学校3年生、4年生用教科書の内容となり、小学校5年生と6年生にはこれまでの授業を基礎にして現在よりレベルの高い内容の授業が行なわれることになる。

本稿執筆の時点では、小学校6年生の英語の授業と中学校1年生の授業とを「つなぐ」ことを目的として中学校の教科書も変わるのかどうかは我々には不明である。

現時点では”Hi, Friends!”と中学校の教科書とを「つなぐ」ものはないので、多くの中学生は小学校で習ったものと同じ英語(今度は読み書きが中心だが)に1年生の間の多くの時間を費やしている。

だから、気がかりとなるのは2020年度以降の中学生が、小学校の時に歩いた同じ道をもっと長い時間をかけてまた歩くことにならないか、という点にある。

そんなことにはならないことをただ望む。

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業界も変わる

文部科学省は総合計画は持っている、だが、その計画を「どうやって」実現するのかについては「心配ない」というもの以上はまだないようである。

2020年度になると、法的義務となる英語の授業時間は2017年度の4倍以上になる。

本稿執筆時点で、平成30年度(2018年度)までに残された期間は10カ月を切っている。この短期間に、政府はこの高邁な「新学習指導要領」の詳細をどうやって実行するのかは多くが見えないままである。

例えば、この「新学習指導要領」の実行に当たってはALTの果たす役割は実に大きいはずだが、文部科学省はどこでどのようにALTを確保するつもりなのかはわからない。

(文部科学省の統計によれば)2016年度時点で日本全国の学校で働いているALTはわずか18,484人であり、そのうちの約25%はJETプログラムによるALTである。

小学校での英語の授業時間だけでも4倍以上に増えることを考えると、文部科学省はこれに応えるためにもっと多くのALTを確保することを計画しているのだろうか、それとも、現行の人数で間に合わせるつもりなのだろうか?

政府がもっと多くのALTを確保することを計画しているのであれば、直接雇用が増えることを期待できるのだろうか?

あるいは、政府は強欲な派遣会社に何もかも丸投げするつもりなのだろうか?

もし政府がそう考えているのなら、そしてそれがこの業界への厳しい規制(国有化も?)もなしだとしたら、これから5年後、日本の英語教育とALTという仕事はどうなっているのだろう?

現在の介護要員の不足への政府の無策ぶりに、もうその答はあるのかも知れない。

厚生労働省によれば、2025年時点で日本の介護要員の不足は38万人に達すると予測されている。

この労働力不足に対応すべく、政府はより多くの外国人労働者をこの仕事に招き入れるための立法措置を取った。

2016年時点で、確保できた外国人介護労働者は、目標人数のわずか1%、3,800人に過ぎない。

公立学校でも同じことが起こるのだろうか?

現時点で確かなことは、政府の「外国語教育における新学習指導要領」は間違いなく実施される、ということである。

日本がうまく対応することを願おう。


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