渦中の池原氏は仰天の舞台裏をこう証言する。
「いゃあ、もうびっくりですねぇ、弁護士の先生方も驚いていますよ。濱崎氏は『中労委でセブンイレブン本部批判をしたから契約更新はできない』というのですからね。岡山労働委のとき、『こうやって委員会で発言したりすることが、今後、契約更新などで不利益になるのではないか』と質問したら、『ありえません』と明確に言っているのですよ。もう、何もモノを言うなということじゃないですか」
契約更新がされないと事業を営めない。店の設備などの設備投資から収益を上げようがなくなり、負債だけが残る。コンビニオ加盟店主にとってはもっとも恐れる本部からの「罰則」で、これを恐れるあまり、従順にふるまうという加盟店主が大半という「大権」だ。
労組が認められ、労使交渉が実現したら、まっさきに交渉でとりあげたいのが、契約更新の条件の明確化だとする加盟店主は多い。いままではこの更新拒否が、本部が気に入らない加盟店主の排除に使われてきたと感じる加盟店主は数多い。
セブンイレブンが委員長「つぶし」とも取れる行動にでた、コンビニ労組とは何か。少し長くなるが、経緯を説明しよう。
ご承知のとおり、セブンイレブンはフランチャイズ方式で全国展開している。全国1万7000強の店のうち、97%が独立の事業者が経営するフランチャイズ店だ。直営店はわずかに470店程度だ。
フランチャイズとは、セブンーイレブン・ジャパンが開発したコンビニ経営ノウハウを脱サラした加盟店主(約8割が脱サラ、2割が酒屋、食品店などの転業)に供与し、その見返りに店の利益を両者で分け合う仕組みだ。
フランチャイズは厳しい加盟店契約に縛られ、年中無休の24時間営業と言う過酷なもの。私の加盟店主への取材では、自殺に追い込まれたり、過労死したり、自己破産、夫婦労働の過酷さ、経営苦などから離婚・家庭崩壊となった店主が数多い。
こんな流れを断ち切り、本部と話し合って契約条件を改善する交渉の場を設けたいとして動いたのが労組の結成だった。加盟店主側は、契約上は独立の事業者の形だが、実態はセブン本部の指揮監督の下、24時間働かされ、経営の裁量や自由はないと主張する。
具体的には、売上金も毎日本部に送金させられ、仮に未送金や値下げ販売などしたら契約違反で解約され、収入の道が絶たれる。こうした労働実態は、独立経営者というより従業員の性格が強いと労組結成の正当性を主張してきた。
申し立てを受けた岡山県労働委員会は4年をかけ、セブン本部と加盟店主の双方から実態を聴取し、2014年3月に「セブンーイレブン・ジャパンの加盟店主は労働組合法上の労働者にあたる」という歴史的な判断を下した。
もちろん、セブン側は岡山裁定を不服として中央労働委員会に再審査を申し立てた。その審議途中の今年4月には、東京都労働委員会がファミリーマートの加盟店主にも労組結成を認めた裁定を出している。こちらもファミマの申請で、中央労働委員会での審議に移っている。
委員長を狙い撃ちにした契約更新の拒否は、中央委員会での審議にセブンーイレブン・ジャパンにプラスに働くとは思えない。なりふり構わない行動にでているのはなぜなのだろうか。
ニュースソクラが池原氏への更新拒否の理由を問い合わせたのに対し、セブンーイレブン・ジャパンの広報は「該当の契約更新については何ら決まったものはございません」と回答した。
渡辺 仁 (経済ジャーナリスト)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150911-00010000-socra-bus_all