留意して頂きたい点がある。この法が強制力を持つかどうかは裁判所の判断によるところが大きい。従って、裁判所の判断や会社側の対応(つまりこの新しい法律に従うか従わないか)について明確に答えることはできない。
我々がお伝えできるのは、我々自身が調査と経験とを通じて学んだことだけである。「あるべき姿」と現実との間には時として差があることもご理解頂きたい。
ゼネラルユニオンは2018年に入って、多くの職場で組合員が既存の労働条件の切り下げや変更なしにこの法改正の恩恵に浴することを確実なものにする取り組みを行なっている。これもご報告しておきたい。
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01. 有期雇用契約の無期への転換を申し込んでから、この転換を現契約の終了を待つことなく速やかに実行することを雇用主に要求することはできるか。今後の雇用主の変節を避けるために。
要求は可能ですが、雇用主にはこれを受け入れる義務はありません。
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02. 有期雇用契約の無期への転換を申し込んだ後、雇用主が法から逸脱して最後の有期契約期間の終了後に次の契約を提示しない(つまり、契約更新拒否による雇い止め)という恐れはないのか。
我々の調査ではこうした行為は違法です。雇用主がそうしたいのであれば、その正当性を証明する必要があります。
転換の申込みは必ず書面で行ない、その書面の先頭には組織の長を提出先として明記することを推奨します。
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03. 有期雇用契約の無期への転換を申し込んだ後、無期雇用契約はいつから発効することになるのか。
申込みを行なった時点での契約の次の契約からとなります。
例えば、申込みを行なった時点での有期雇用契約が2018年4月1日から2019年3月31日までであるとしたら、無期契約は2019年4月1日からになります。
ですが、これまでの契約とは異なり、2019年4月1日からの契約には「契約満了日」がありません。
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04. 派遣会社所属のALTには「5年ルール」は適用されるか。
雇用開始時点で雇用期間が設定されていない限り「5年ルール」は適用されます。
また、無期契約になれば、労働者派遣法に基づく「1職場には3年以内」の制限も適用されません。
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05. 「無期契約に転換した者は定年60歳」とする条項を、雇用主は契約に加えることができるか。
我々の厚生労働省への調査では、以下が明らかになっています。
a. 無期契約への転換にあたって労働条件の変更があってはならない。
b. 定年制の追加自身は不合理ではないが、それを無期契約への転換の条件にしてはならない。
分かりにくいですよね。
実際には、裁判所の判断、雇用主との交渉の結果、ストライキを含む労働組合の闘いの結果などが待たれているのです。
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06. 無期転換にあたって、雇用主は給与や労働時間を変更することはできるか。
法的には、給与を増額することはできますが正当な理由なしに減らすことはできません。
注意:「労働条件の変更ができないのだから、今後の賃上げも労使交渉の議題にはならない」 と言う雇用主もいます。
これは事実ではありません。労働組合員は組合を通じてあらゆる労働条件について雇用主に要求できます。
シフト勤務については、雇用主は合意に基づいて(あるいは、時々「業務上の必要さ」に基づいて同意なしに)これを変更することは認められています。ですが、この変更を無期転換の条件にすることはできません。
例:あなたの勤務場所や勤務日、勤務時間に毎年変更があるとすれば、同じことは無期転換後にもあり得ることです。
こうした変更が毎年行なわれることはあなたの労働条件の一部だからです。
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07. 従業員との契約の無期転換を避けることを目的として、5年目の契約終了時に(契約更新拒否その他の方法で)雇用主がこの従業員を解雇することは可能か。
それはできません。
有期雇用契約から無期契約への転換は法により与えられた権利で、無期契約への転換を申し込んだ時点で発効します。
従って、無期契約への転換を専らの目的として雇用契約を終了させることは決して許されません。
ですが、この争いの最終決着が交渉を通じて可能かあるいは裁判の結果を待たねばならないのかは現在も論点の一つです。
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8. 雇用主は、従業員に有期雇用契約から無期契約への転換を申し込む権利を与えない方法として、継続雇用期間の切断を目的として6カ月の「クーリング期間(つまり強制退職)」を設定できるか。
ゼネラルユニオンは現在、この問題に取り組み中です。
明確な点があります。この「6か月のクーリング期間」は「連続した6カ月」でなければならないことです。
また、このクーリング期間が脱法を目的としたものであってはなりません。
裁判所がこの法律への対応を始めていますから、この問題も今後さらに展開を見せるでしょう。
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9. 雇用主は有期雇用契約から無期契約への転換の申し込みを拒否できるか。
従業員が転換を申し込む条件を満たしていれば、雇用主はこの申し込みを合法的に拒むことはできません。
厚生労働省からの情報もこうした問題に精通した弁護士からの情報も、雇用主はその申し込みを受け入れなければならない、としています。
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10. 「現在の仕事は5年後にはなくなるので、その後はもっと給料の安い有期雇用契約しかできない」と雇用主は言えるか。
労働契約法は有期雇用契約から無期契約への転換について転換前と後の労働条件は同一でなければならない、とし、そうでなければ転換とは呼べないとしています。
しかし、2013年4月1日以降に雇用された者の契約に契約期間の上限が5年であることが明記されている場合には、この雇用期間の制限は法違反とはなりません。
雇用主が専ら法から逃れることを目的として新たな従業員にこの制限を設定するのであればそれは法違反となる可能性がありますが、これを証明することは非常に難しいのが実際です。
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11. 無期契約への転換とは正社員になることか。
いいえ。
この法律への理解不足から、有期雇用契約から無期契約への転換とはその会社の正社員になることだと考えている方もおられます。
そうではありません。
「無期契約」とは、勝手に契約を終了させられることがなくなる、ということを意味しているだけです。
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12. 無期契約への転換は社会保険への加入も意味するのか。
無期契約への転換は、社会保険あるいは私学共済への加入/非加入とは関係がありません。
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13. 無期転換は派遣会社、英会話学校などにも適用されるのか。
この法律は、有期雇用契約で民間企業で働いている全ての労働者が対象です。
最近メディアでは専ら大学が取り上げられていますが、派遣会社、英会話学校で働いている方はどなたでも、継続して5年より長く有期雇用契約で働いていれば無期転換を申し込む資格があります。
派遣会社で働いておられるとしたら、無期転換の後は一か所で3年以上働くことが可能になります。
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14. 従業員はどうやって雇用主に自分の有期契約を無期契約に転換するように申し込むのか。
従業員は雇用主に契約の無期けの転換を申し込まねばなりません(できる限り書面で)。
申込用紙を自社で用意し、それを使うように求める雇用主もいます。
義務ではありませんが、その用紙に不審な情報が掲載されていたり理解できない条件が加えられているようなことがなければ、その用意された用紙を使うのがいいと主増す。
この用紙は厚生労働省が推奨する書式に沿ったものです(我々が翻訳を加えました、クリックすると全面表示になります)。
法的には、雇用主はこの申し込みを拒否することはできませんので、手続きはこれで全部ということになります。
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15. 会社が無期契約への転換を機に従業員を社会保険に加入させた場合、その保険料の会社負担分を捻出するために給料を減らすのは違法か。
社会保険料のうちの会社負担分を従業員に負担させるために給料を削減するのは違法です。
無期契約への転換を理由に労働条件の変更があってはなりません。
しかし会社が無期転換にあたってその従業員を社会保険に必ず加入させるのであれば、この転換より前に社会保険に加入しておくべきです。労働条件は転換の前後で変更はないとされているからです。
(つまり、社会保険についても転換後にも条件が変わらないのであれば、転換前の条件には社会保険が含まれるからです。)
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16. 私の契約書には「更新不可」と記載されている。私も無期契約への転換が可能か。
1年契約の契約書に「更新不可」と記載されていて、実際には契約が更新された場合(次の契約書にも同じ条項が記載されていて)には、雇用主が後から契約書の中のこの条項を理由に契約更新を拒むことはとても難しくなります。
更新回数が増えれば増える程、契約更新を求める(そして将来には無期契約を)あなたの立場はより有利になります。
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17. 私は今の会社に5年間働いているが、契約は毎年1年契約だ。私は5年間継続して働いたことになるのか、それとも、1年を繰り返しているだけ、となるのか。
個々の契約が1年契約であっても(つまり1年契約、1年契約、1年契約…)、5年の継続した雇用とみなされます。
いずれかの契約の間に6カ月以上の空白期間がある場合のみ、その雇用は継続していない、とみなされます。
1日、3週間、2か月半などの空白期間は、雇用の継続性には影響がありません。
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18. 私は派遣会社に所属している。そして同じ教育委員会の下で5年以上働いている。私は教育委員会に直接雇用を申し込めるか。
できません。
「無期転換」とは、所属している会社に対して有期雇用契約を無期契約に転換することを申し込める、ということです。
派遣ALTは派遣会社に所属していて、教育委員会に所属しているのではありません。
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19. 雇用主が法律に沿う形で、ある労働者との5年間の雇用期間上限での雇用契約を終わらせ、その直後に同一人物を同一の仕事で無期転換の申込権なしで再雇用することは合法か。
いいえ。法律違反です。
この場合、雇用主は以前の雇用期間上限は実は不要になった(次の雇用を約束しているから)ことを明確に表明していることになるので、6年目の継続雇用が存在していると見なされ、従って、この労働者は無期契約への転換の申込権を持つことになります。
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20. 雇用主が契約書に契約期間の上限を設定することは合法か。
新規採用者に契約期間の上限を設定することは合法です。
しかし、我々が得た情報あるいは助言によれば、既存の従業員には「更新期待権」があるために、雇用主が契約期間の上限を設定することはできません。
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21. 雇用主が1年雇用契約の中に契約期間の上限を設定することは合法か。
雇用主が1年雇用契約の中に契約期間の上限を設定することは合法です。
この契約期間の上限に沿って契約更新回数の上限も設定されることになります。
「更新期待権」は年を重ねるごとに大きくなりますから、雇用主が後から契約期間の上限を設定することは非常に困難になります。
労働者が「1年契約」で働いてる場合であっても、この人達が「毎年新規採用者になる」のではありません。
但し、ある契約の終了と次の契約の始まりとの間に相当の期間が存在する場合(例えば「半年勤務/半年空白」のような雇用形態)は例外となります。
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22. 雇用主が正規の就業規則の中で雇用期間の上限を設定することは合法か。
最初の契約が成立する以前に問題の雇用期間の上限が就業規則の中で定められているのであれば、雇用主が正規の就業規則の中で雇用期間の上限を設定することは合法だと言えます。
雇用期間の上限は将来に向けての適用(今後の従業員向け)は可能ですが、遡及適用(現従業員向け)はできません。
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23. 雇用主が正規の就業規則の中で雇用期間の上限を設定しながら雇用契約の中には記載しないのは合法か。
残念なことですが、雇用主が正規の就業規則の中で雇用期間の上限を設定しながら雇用契約の中には明記せず、なおかつこれを今後の採用者に適用するのは合法とされています。
これに問題があるのは明らかです。日本人であれ外国人であれ、従業員の多数が「そんな就業規則は見たことがない。就業規則があることは知っているが」と声を上げることはもっともなことでしょう。
この問題が放置されれば将来、事前に何も知らされていない従業員が5年の勤務を終えた時点で雇用主から「君はもうここでは働けない」と言い渡される状況も大いに考えられるのです。
ですが、役立つこともあります。雇用主には、就業規則を従業員が見れるようにしておく義務があるのです。
更に、労働者は自分が知っていることのみについて了解することができます。
W労働者が「そんな就業規則は知らなかった」と言い、雇用主は「従業員には教えた」と言う――そんなやりとりが法廷で繰り広げられる事態がきっと起こるでしょう。
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24. 無期転換申込権を得るには、労働時間の下限はあるか。
ありません。
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25. 会社Aで3年働き、その後会社Bで2年働き、それからまた会社Aに戻って2年働いた場合、これは「5年の継続雇用」となるのか。
無期転換申込権を得るには、同じ雇用主の下で契約期間を「切断」することなしに5年間働かねばなりません。
「切断」とは6カ月以上の契約空白期間を指します。
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26. 私の契約には5年の雇用期間上限がある。5年の雇用期間を終えた後に無期契約への転換を申し込めるか。
5年の雇用期間上限が雇用の条件であり、また、最初の契約時に雇用主と従業員との間で雇用契約が5年後に終了することについて了解があった場合には、従業員は有期雇用契約を無期契約に転換することを申し込むことはできません。
しかし、雇用主が5年を過ぎても雇用を継続することを示唆していた場合(例えば契約更新や契約期間の延長等の約束)には、過去に契約更新の実績があれば無期契約への転換を申し込むことができます。
雇用主は、「1年契約を寄せ集めただけ(つまり、1年契約×5)で継続雇用ではない」という論理で無期契約への転換の申し込みを拒むことはできません。
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27. 雇用主が「雇用関係は5回目の契約で終わり」と言っている。そんな制限は契約書にも就業規則にも記載されていない。また、そんな制限はこれまで聞いたこともない。これは合法か。
通常、一度契約更新を過ぎれば、正当な理由なしに雇用主は従業員を解雇することは違法となります(だが残念なことに現実には、最初の数年間は契約更新拒否が比較的容易に行なわれています)。
従って、従業員が5期目の1年契約を終えたという理由だけで雇用主はその従業員を解雇することはできず、また、思いつきでそんな制限を設けることはできないのです。
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28. 雇用主が私の5年目以降の契約は更新しないと言っている。これは合法か。
それは労働契約法第19条が謳う「雇い止め法理」の侵犯となりますので、無効です。
このような解雇を撤回させるには法廷内外での長期の闘いが必要で、これが容易でないのが事実です。
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29. 無期契約に転換する利点は何か。
まず、仕事が確保されることです。
無期契約に転換すれば、従業員は契約更新について毎年心配する必要がなくなります。
更に重要なことは、契約更新拒否と言うやり方で雇用主が理由もなく従業員を解雇することを、無期契約は阻むのです。
法理論上は、長期間に渡って1年契約を重ねてきた労働者は「更新期待権」でその仕事は守られていることになっています。ですが、無期契約は横暴な解雇から労働者が自らを守る権利を更に大きく強化するのです。
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30. 有期雇用契約から無期契約への転換申込権を得る条件は何か。
6回目の1年契約期間に入れば直ちに(2013年4月1日以降に作成された契約が必要)、この転換申込権を得ることになります。
注意:2013年4月1日より以前に作成された契約書については、その期間は有期雇用契約から無期契約への転換申込権を得る期間の計算には一切含まれません。
例:あなたの契約が2013年3月31日から2014年3月30日だった場合には、あなたの「1年目」の計算は2014年3月31日から始まります。
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31. 無期契約への転換のマイナス面はなにがあるか。
客観的に言ってありません。
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32. 最も早く無期契約への転換を申し込めるのはいつか。
法施行から6年目の初日にあたる2018年4月1日です。
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33. 非常勤教師は無期契約への転換によってこれまでと同じ授業時間/コマ数/授業数を確保できるようになるのか。
それは雇用主の必要さによります。
今後の裁判に向けて、雇用主の「必要さ」についての理解をもっと具体的に深める必要がありそうです。
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