ゼネラルユニオンは帝塚山大学へ「組合員が担当するはずだった科目の不開講は休業にあたるので、組合員へ賃金補償せよ」と要求しましたが、帝塚山大学は「雇用契約上1ヶ月分の賃金を払えばよい」、「大学の裁量で不開講とすることができる」、「不開講は大学の責めに帰す事由ではない」と主張し、組合員へ不開講分の賃金を一切補償しませんでした。
労基法第26条は「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。」と定めています。帝塚山大学が組合員へ平均賃金の6割に相当する賃金補償(休業手当)を支払わなかったことは、労基法第26条に違反します。
組合員は、帝塚山大学の労基法違反(休業手当不払い)の是正を求め、奈良労基署へ申告しました。2011年3月3日、奈良労基署は、組合員の申告どおり、帝塚山大学へ「休業手当を支払え」と是正勧告しました。帝塚山大学は、奈良労基署の是正勧告により、組合員へ休業手当を支払いました。
2012年の休業手当不払い
2012年1月、帝塚山大学は組合員と2012年度の雇用契約を取り交わすにあたり、それまで無かった「不開講が休業補償の対象とならないことを承諾する」と記載された承諾書へ署名するよう求めました。また、帝塚山大学は「この承諾書に署名した講師とのみ雇用契約を取り交わす」との方針を明らかにしました。ゼネラルユニオンが帝塚山大学へ「承諾書は労基法違反であり無効である」と通告した上で、組合員は、次年度の雇用のため、やむを得ず承諾書へ署名しました。
2012年4月に同年度前期の授業が始まりましたが、組合員が担当するはずだった授業はまたしても不開講となりました。帝塚山大学は組合員へ同年4月分の賃金は支払いましたが、同年5月以降は一切支払いませんでした。ゼネラルユニオンは帝塚山大学へ「組合員へ賃金補償せよ」と要求しましたが、帝塚山大学は、前述の承諾書を理由に、「組合員は休業補償がされないことに合意している」として、組合員へ不開講分の賃金を一切補償しませんでした。
帝塚山大学は、承諾書を根拠に休業手当の支払い義務を逃れようとしましたが、労基法第13条は「この法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする。(後略)」と定めていますので、労基法違反の承諾書は無効です。よって、帝塚山大学が、承諾書の存在を理由に、組合員へ休業手当を支払わないことは労基法第26条に違反するので、組合員は奈良労基署へ再び申告しました。2012年7月、奈良労基署は、組合員の申告どおり、帝塚山大学へ「休業手当を支払え」と是正勧告しました。
奈良労基署から是正勧告されたにもかかわらず、帝塚山大学は「労基法違反はない」と強弁し組合員へ休業手当を支払おうとしませんでした。
刑事告発へ
労基署の是正勧告をきっかけに、休業手当の支払いを義務逃れるために承諾書への署名を求め、その後奈良労基署から出された是正勧告に従おうとしない帝塚山大学の態度は極めて悪質です。労基法で定めた労働条件は最低限のものであり、これすら守られないようでは、労働条件は無限に切り下げられてしまいます。また、帝塚山大学は法学部を擁する総合大学であり、学生に法を教えるのであれば、自ら法令遵守を徹底せねばならないはずです。
この通り、帝塚山大学の労基法違反(休業手当不払い)は放置することが出来ないので、2012年12月にゼネラルユニオンは同大学の労基法違反を奈良労基署へ刑事告発しました。奈良労基署は刑事告発を受理し、送検に向けて捜査を進めています。
帝塚山大学は、自らの労基法違反が刑事告発にまで至ったことを真摯に受けとめ、速やかに法違反を是正すべきです。ゼネラルユニオンは、帝塚山大学が法違反を是正するまで、追及を続けていきます。