「残業上限規制」政府案は「過労死容認」案である


「働き方改革」の中心の一つとされる「残業時間の上限規制」についての政府案が決定された(全文はここ)。

以下がその主な内容である。

(1) 原則は「月45時間以内、年360時間以内」。

(2) 繁忙期などの特例として、年間の上限は「720時間(月平均60時間)」。

(3) 月45時間を超えられるのは年間6カ月まで。

(4) 忙しい時期の上限は「2~6カ月の平均でいずれも月80時間」。

(5) 特に忙しい月の上限は「100時間未満」。

(6) 「休日労働」は残業時間とはみなさない。

(7) 「インターバル制度」を「努力義務」とする。

(8) 実施から5年後に見直しを検討する。

 

この政府案について、「残業規制に初めて上限を設定し、罰則を導入した」ことを「画期的」と評する向きもある。「第一歩だ」と社説を掲載した大手新聞もある。

電通の新入社員で過労自殺した高橋まつりさん(当時24)の母、幸美さん(54)はこの政府案が明らかになった直後、コメントを発表した。以下がその全文である。

 

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月100時間残業を認めることに、強く反対します

政府の働き方改革として、一か月100時間、2か月平均80時間残業を上限とする案が出されていますが、私は、過労死遺族の一人として強く反対します。

このような長時間労働は健康にきわめて有害なことを、政府や厚生労働省も知っているにもかかわらず、なぜ、法律で認めようとするのでしょうか。全く納得できません。

月100時間働けば経済成長すると思っているとしたら、大きな間違いです。人間は、コンピューターでもロボットでもマシーンでもありません。長時間働くと、疲れて能率も悪くなり、健康をそこない、ついには命まで奪われるのです。

人間のいのちと健康にかかわるルールに、このような特例が認められていいはずがありません。

繁忙期であれば、命を落としてもよいのでしょうか。

命を落としたら、お金を出せばよいとでもいうのでしょうか。

娘のように仕事が原因で亡くなった多くの人たちがいます。死んでからでは取り返しがつかないのです。

どうか、よろしくお願いいたします。

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過労死ラインとされる月80時間を超える「月99.9時間(100時間未満)の残業」を合法化するこの案は「過労死容認」でしかない。

2017年1月17日に発表された「平成28年4月から9月までに、長時間労働が疑われる10,059事業場に対して実施した、労働基準監督署による監督指導の実施結果の取りまとめ」の中では、「月80時間を超える残業」は、厚生労働省自身によって「長時間労働是正の監督指導の対象」とみなされている。

この、過労死ラインを是非の分岐点とみなす厚生労働省の考えには「死ぬギリギリまで働けというのか」との批判が寄せられていた。

だが今回の政府案は、厚生労働省のこの姿勢からさえ更に後退している。

加えて、上記(6)にある通り休日労働は「時間外労働ではない」とされていて、実質で「毎月80時間、年間960時間」の残業が許される。

いったいこれが「長時間労働規制」か?

この政府案には、労働者・労働組合が積極的に評価できる要素はない。法案として国会に提出されれば「反対」の声を上げるだけだ。


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